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プレスリリース競争が研究者の仕事なのか

インターネットで変わる高等教育の形

2013年1月25日(金)

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 先日、大学院時代の知り合いと1年ぶりに会う機会があった。理学系の若手研究者である彼は現在、ある国立大学の教員として研究活動と大学の広報業務という、2つの仕事を担っている。今回も、居酒屋で食事をしながら、米国の著名論文誌に発表した最新の研究成果について熱心に説明してくれた。

 実は筆者も、学生時代は研究者を志していた。しかし、経済誌に携わるようになった今、大学教員である彼の仕事について、専門的な研究内容よりも、将来の研究者となる人材育成というテーマの方に関心が向いてしまった。彼は広報担当教員として、修士課程の学生を対象に研究成果を社会に伝える「科学コミュニケーション」の講義を受け持っている。科学技術に対する社会的関心の高まりについて、手ごたえを尋ねてみた。

文科省と年配男性が主な相手に

 彼は、苦笑しながら次のように答えてくれた。

 「科学コミュニケーションと言っても、主に教えているのは、研究成果を記者発表するときのプレスリリースの書き方。大学も予算が年々厳しくなっているから、毎年、文部科学省に『今年は新聞掲載が何件、テレビの放映が何件あった』と、具体的な数字を報告しないといけない。マスコミで取り上げられると大学の理事なども喜ぶ。でも、教授陣の中には、専門用語を簡単な言葉に言い換えようとすると、『研究の品位が下がる』と反発する人もいるし、認識は共有できていない」。

 彼はさらに、こう続けた。

 「サイエンス・カフェ(小さなレストランなどを貸し切り、科学者が地域の人に最新の研究動向などを解説する催し)にも時々参加しているけど、いつも聴講者の大半は年配の男性だ。科学コミュニケーションの本来の目的からすると小中学生にも来てもらいたいと思っているけど、今は子供も忙しいみたいだし」――。

 筆者は学生時代の一時期、科学館で解説員のボランティアをしていたことがあり、科学に高い関心を示す層が50歳代以上の男性というのは、肌感覚として理解できる。また、大学在籍当時は、「研究者以外の道を選ぶのは“ドロップアウト”に等しい」という、業界に漂う独特の雰囲気も感じていた。こうした状況で科学コミュニケーションを推進しようとしても一筋縄では行かないのは想定できるが、あまりにも予想通りの回答に思わず笑ってしまった。

 研究者や技術者といった人材を育てるには、雇用環境の改善や研究資金の配分見直しなど多くの課題があり、それぞれが解決に時間のかかるテーマだ。しかし、彼の話を基にすれば、少なくとも科学コミュニケーションは、その役割を一度見直す必要があるのではないだろうか。

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「プレスリリース競争が研究者の仕事なのか」の著者

田中 深一郎

田中 深一郎(たなか・しんいちろう)

日経ビジネス記者

日経新聞科学技術部、証券部を経て、2012年4月より日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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