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雇用と所得は「誰が」奪ったのか

『機械との競争』第1章を公開 テクノロジーが雇用と経済に与える影響(上)

  • エリック・ブリニョルフソン

  • アンドリュー・マカフィー

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2013年2月7日(木)

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 「デジタル革命はいまがちょうど半ば。今後は凄まじいスピードで加速する」「人間はコンピュータに仕事を奪われていく」――。

 こんな衝撃的な内容の電子書籍が2011年、“Race Against The Machine"というタイトルで米国で公にされた。

 著者は、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクールのデジタル・ビジネスセンターの所属するエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィー。

 この2人がまとめた近未来の技術と人間に関するこの報告書は、リーマン・ショック後の世界不況からようやく立ち直りつつあった米国国内で大きな話題となり、その反響の大きさから、2012年にはペーパーバック版として出版された。

 今回公開するのは、この報告書の邦訳版『機械との競争』の第1章である。

 景気回復にあらゆる手を尽くしても、機械が人間の領域を侵食していく限り、雇用の回復は見込めないという「予見」に、我々人間はどう対処すればいいのか。

 第1章を読むだけでも、この本がビジネスパーソンに与える衝撃の大きさは伝わってくるだろう。

 これからますます“機械との競争"にさらされる人間の働き方は、どう変わっていくのか、また、組織はどう変わっていくべきなのか。大きな問いが投げかけられている。

 本書は、情報技術が雇用、技能、賃金、経済におよぼす影響を論じる。なぜいまこれが重要なテーマなのか─それは、最近のアメリカの雇用統計を見れば一目瞭然である。

 2011年夏、アメリカ経済はよいニュースを渇望していた。そして7月には、11万7000の新規雇用が創出されたと政府が発表する。5月と6月には合計で10万を下回っていたのだから、これはよいニュースと受け止められ、8月6日のニューヨーク・タイムズ紙は「アメリカの雇用は堅調な伸び」と見出しを付けたものである。

 だが景気のいい見出しの背後には、悩ましい問題が控えていた。11万7000の新規雇用が創出されても、人口の伸びには追いつかないのである。まして、2007~9年の大不況(Great Recession)で失業した1200万人の再雇用は言うまでもない。

 経済学者のローラ・タイソンの試算によると、雇用創出が現在のおよそ倍の月20万8000件のペースに達しても、大不況が引き起こした需給ギャップが埋まるのは2023年になるという。ちなみに月20万件というのは、2005年のペースに相当する。一方、2011年7月に創出された雇用機会が労働人口に占める比率は、過去最低の水準にとどまった。しかも政府は9月になると、8月中に創出された新規雇用は差し引きでゼロだったと発表している。

 大不況とその後の回復に関するこの憂鬱な統計は、雇用が最悪の状況に陥ったことが読み取れる。不況が失業者を増やすのは言うまでもないが、2007年5月から2009年10月にかけて、失業率は5・7ポイントも急上昇したのだ。これは、戦後で最も大幅な上昇である。

雇用なき景気回復

 だがもっと重大な問題は、景気が回復しても失業者が職を見つけられなかったことである。2011年7月、すなわち大不況の終結が公式に宣言されてから25カ月後のこの月に、アメリカの失業率はまだ9・1%という高水準にあった。最悪の時期からわずか1ポイントしか下がっていない。

 失業期間の中央値は39・9週間と大幅に延び、戦後のどの景気回復期と比べても、ほぼ倍の長さに達した。さらに、労働力参加率すなわち労働年齢の成年のうち職に就いている人の比率は、64%を下回っている。これは1983年以来の低水準だ。しかも当時は女性の労働力参加率がいまほど高くなかった。

 これが切迫した問題だということは、誰もが認めている。ノーベル賞受賞経済学者のポール・クルーグマンは失業を「おぞましい禍」「延々と続く悲劇」と表現し、「大学を出た若者が何百万人ものキャリアをスタートするチャンスさえ与えられない状況では、この先20年間、繁栄は期待できまい」と述べている。

コメント10件コメント/レビュー

(続き)これでは恐ろしくて、企業はいくら内部留保があっても社員の給与を増やす決断が出来ないし、そう簡単に社員を増やすことも出来ない。「世界で二番手」になる日に備えて「いつでも切れる契約社員」しか置きたくなくなるのは、自然な成り行きであろう。世界中の人が「地球の裏側の小さなつぶやき」が聞き取れるようになったことで、「風評による取り付け騒ぎで銀行が倒産になる」のと似た現象が世界中で毎日起きているのである。これに拍車をかけているのが、先物取引とカードローンであろう。いま物は出来ていなくても、あとで買いたいときには買えなくなるので先買いする。それが可能な状況では、憶測が憶測を呼んで実際の適正価格以上に価格が変動してしまっている。元はと言えば「不安定さを解消する」手段として導入されたものが、不安定さに拍車をかける存在となっている(それが「仕組み」として組み込まれてしまっていて、害があっても廃止できなくなっている)。カードローンは逆である。本来なら「払えるお金ができてから」買えばいいものを、「欲しい時」に変える仕組みを提供している。このことが様々な商品の販売数の乱高下を牽引している。「現金で持っている分だけ」しか買えない仕組みに戻せば、各企業の売上げの変動はかなり穏やかになるはずであるが、それは地球の自転方向が逆転するよりも「ありえないこと」だろう。情報の伝達速度も下がることはない。世界の雇用状況は二度と安定しないだろう。(じぞう)(2013/02/08)

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(続き)これでは恐ろしくて、企業はいくら内部留保があっても社員の給与を増やす決断が出来ないし、そう簡単に社員を増やすことも出来ない。「世界で二番手」になる日に備えて「いつでも切れる契約社員」しか置きたくなくなるのは、自然な成り行きであろう。世界中の人が「地球の裏側の小さなつぶやき」が聞き取れるようになったことで、「風評による取り付け騒ぎで銀行が倒産になる」のと似た現象が世界中で毎日起きているのである。これに拍車をかけているのが、先物取引とカードローンであろう。いま物は出来ていなくても、あとで買いたいときには買えなくなるので先買いする。それが可能な状況では、憶測が憶測を呼んで実際の適正価格以上に価格が変動してしまっている。元はと言えば「不安定さを解消する」手段として導入されたものが、不安定さに拍車をかける存在となっている(それが「仕組み」として組み込まれてしまっていて、害があっても廃止できなくなっている)。カードローンは逆である。本来なら「払えるお金ができてから」買えばいいものを、「欲しい時」に変える仕組みを提供している。このことが様々な商品の販売数の乱高下を牽引している。「現金で持っている分だけ」しか買えない仕組みに戻せば、各企業の売上げの変動はかなり穏やかになるはずであるが、それは地球の自転方向が逆転するよりも「ありえないこと」だろう。情報の伝達速度も下がることはない。世界の雇用状況は二度と安定しないだろう。(じぞう)(2013/02/08)

「同じものを提供するのにかかる人件費が下がり続けている」こともさることながら、私は「情報の伝達速度が速すぎること」および「先物取引とカードローンの存在」を原因に挙げたい。最近はあまり聞かなくなったが、以前は海外は「イナゴが大量発生して穀物を食い尽くす」という災害がしばしば発生したと聞いたことがある。しかし、それはごく局所的、一時的なものであって、慢性的にそのような状態になることはない。およそ自然界の食物連鎖の中では一時的にはバランスが崩れても元に戻る仕組みが備わっている。これは自然界の動物が自分自身の視覚や聴覚、嗅覚で判断し、自分の脚力で移動しているからであり、そしてまた今の空腹を満たす分量以上には「喰い貯め」できないからである。ライオンは地球の裏側にいるシマウマを食べに行くことはしない。イナゴはかなり長距離を移動するが電子メールが飛ぶ速さには遠く及ばない。失業がいつまでも解消しないのは、情報の伝達速度が速くなりすぎたために、世界中の人が「世界で一番安くていい商品」を買おうと競っているからではないか。だから、昨日まで一番だった売れ筋商品がある日突然全く売れなくなる。「世界一」だったときには爆発的に売れるから大量に生産しておきたい。しかし、ある日「世界で二位」になったとたんに全く売れなくなる。とたんに積みあがる在庫の山。(続く)(2013/02/08)

私は常々、第三の説と第二説の変種が現実に起きていると考えてきました。世界中の人にモノやサービスを供給するために必要とされる労働者の数が減っていることは、本来とても好ましいことのはずですよね。社会の中でより多くの人が働かずに済むわけですから。しかしながらこれまでの人類発展の歴史の中では、怠け者には厳しくしないと成り立たなかったので、価値の創造に貢献したものほど見返りを多くする社会構造が構築されてきました。そのため、せっかく少ない労働者数で同等の価値が生み出せるようになっているものの、その価値の創造に参加した者にしか価値を分配できない社会構造になっているために、多数の不幸を生んでいるように思います。(2013/02/07)

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ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長