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テレビ卒寿の日

2013年2月7日(木)

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 私のツイッターのニックネームはvideobirdとなっているのだが、これはまあテレビをビデオに録ったり、ビデオカメラを回したりするのが好きな、とり……というくらいの意味である。

 この2月1日は、NHKがテレビ放送を開始してちょうど60年目であったそうだ。
 NHKに遅れること半年、8月には日本初の民放局である日本テレビが開局した。公共放送と民間放送という、二つの形態のテレビ局が、同じ60年前の1953年にスタートしたのである。

 ……というわけで、2月の頭に、この両局によるコラボ、という大変珍しい形式の記念番組が二晩連続で放送された。一夜目がNHK、二夜目が日テレ。
 色々ツッコミ所はあるものの、全体として私は面白く視聴した。

 それにしても60年。中身に触れる前に、まず「60年」という、その年数に、ちょっと驚きのような感慨があった。「ついこないだ30年とかいってたんじゃなかったのか……ええと、感覚では2~3年くらい前」

 そんな最近なわけはないが、月日というのは年を追うごとに加速度的に過ぎていくのはご存じの通り。筒井康隆さんの小説のように、瀑布となって流れ落ちるのも、そろそろ時間の問題だ(まさに)。

 実際にはテレビ30年の特番が放送されたのは、ちょうど30年前のことである。
 すまない。あたりまえだ。……しかし、これは私の個人的な印象かもしれないが、たぶん、40周年記念番組や、50周年企画もOAされているはずなのに、そしてそれらも私は録っているはずなのに、実は内容をあまりよく憶えていない。

 逆に1983年に放送された30周年特番は非常に強く印象に残っている。
 このときNHKでは、けっこう大きな規模で特番体制が組まれた。
 だが、よく憶えている理由は、それだけではない。

 30年といえば、そのときは長い歴史に感じられたものだった。私はテレビよりも少しは若いので、当然だ。しかし、こうして、その倍の時間が経ってしまうと、当時のテレビはいかにもメディアとしてはまだ若かった、ともいえる。

 その若かった80年代初期のテレビ業界のイケイケぶりというのは、今から考えれば恥ずかしいくらいのものがあった。60年代だってそうだったのでは、という声が上がるかもしれないが、そのころはニューメディア特有の得体の知れない活気はあっても、同じくらい、映画や新聞といった先達メディアへのコンプレックスも抱えていただろう。

 だが、80年代にはテレビの勝利はもはやあきらかになっていた。

 技術的にはENGカメラ(※)の小型化と、報道やドラマロケへの使用、ということがいちばん大きかったと思う。ニュースでも、ドラマでも、フィルムを使っている以上、それは映画の追随というか、縮小された規模での模倣にすぎなかったが、ビデオが街や野に出たとたん、それは一変した。(※Electoric News Gathering、素材、編集をフィルムではなくビデオで行うこと)

 いまではあたりまえのように見ているドラマの街頭ビデオロケも、70年代はまだ珍しく、スタジオでの録りはビデオだが、ロケになるとフィルム、というのが普通だった。ビデオによるロケシーンが印象的だったのは鶴田浩二・桃井かおり・水谷豊が主演したNHKの「男たちの旅路」で、先日の二局特番でも少しだけ流れていたが、内容以前にその映像の生々しさにまず驚いた覚えがある。

 報道番組での臨場感についてはマンガ家がわざわざいうまでもない。肩乗せVTR一体型カメラはニュースやワイドショーを一変させた。私はなぜだかこの機材=具体的にはソニーのベータカムが大好きで、何度も自分のマンガに登場させている。
 ビデオの電気信号はテレビが持ち得た独自の表現であり武器だったのだ。

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「テレビ卒寿の日」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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