やはりなかった「大胆な金融緩和」
前回、安倍政権の「大胆な金融緩和」について検討しましたが、結論は「『大胆な金融緩和』の実現可能性はきわめて低く、期待感が剥落することになれば株安・円高に振れる」といったものでした。実際、2月15日から16日にかけての主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で「為替レートを競争力強化の目的には使わない」との文言が声明文に盛り込まれたことは、18日の参院予算委員会での麻生太郎財務相の「為替のことに関して一切発言することができない」との発言に見られるように、政権首脳の円安に対するスタンスを慎重なものにしています。
また市場参加者の期待が強い外債購入についても、安倍晋三首相が18日の参院予算委員会で「外債を買うという考え方もある」と述べると、翌19日には麻生財務相が「外債を購入する気はない」、甘利明再生相が「一般論として言ったと思う」などと、ただちにこれを否定したことから見て、可能性はほぼ消えたといっていいでしょう(余談ですが、首相の発言を周りが直ちに否定しても「不仲」とか「対立」とか言われないところが、この政権のユニークなところです)。
今後は「『大胆な金融緩和』はない」との見方が広がり、それに伴っていったん株安・円高に振れる局面があると考えていますが、金融緩和が期待できないからといって、政治が株式市場に対して無力というわけではありません。そこで今回は、「どのような政策が株式市場を押し上げるか」について検討します。
「内容」よりも「実行力」が大切
政治が株式市場に与える影響を考える上で、参考として2005年と2009年の総選挙前後の株式市場の動きを見てみましょう。
2005年9月11日の郵政選挙では、小泉純一郎首相率いる自民党が大勝。これを受けて東証株価指数(Topix)は大幅上昇しましたが(【グラフ1】参照)、これは小泉政権の看板政策である郵政民営化が、景気や企業業績にプラスと評価されたためではなく、小泉首相の決断力や実行力が評価されたためです。
当時は外国人投資家が7月から11月まで5カ月連続で、毎月1兆円以上の日本株を買い越すなど、需給面が株価上昇の原動力でした。特にこれまで日本株投資の経験がなく、日本のことをよく知らない北欧や南欧などの投資家が、「日本にはコイズミというすごいやつがいる」と聞いて、日本が変わるとの期待感から買ったといわれました。ちなみにこうした投資家の多くは、2007年の参院選大敗、さらに安倍首相の辞任表明により小泉改革の行き詰まりが明確になったとして、2005年に購入した日本株を売却したといわれています。
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