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最も大切なことを、後回しにしてはいけない

技術倫理に見る、企業の社会的責任(第1回)

2013年3月6日(水)

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 今回から、倫理と企業の社会的責任について考えていきます。まず、東京理科大学大学院のイノベーション研究科に設けた、「技術倫理・哲学」という講座について説明しましょう。こうした講座が必要なのは、技術者個人にも、日本の企業の中にも、業績を追い求めるばかりで、倫理観が乏しくなっているように感じているからです。

 この講座は、職業上の倫理について考えを深めていく内容ですが、我々は技術経営(MOT)を目的とした研究科ですので、技術倫理と呼んでいます。2010年に開設し、初年度の受講生は約10人でしたが、2年目の2011年度は3月11日の東日本大震災の直後に講座がスタートしたこともあり、一気に3倍に増えました。東京電力の福島第一原子力発電所の事故への対応に批判が高まっていた時期で、一時的ではありますが、倫理への意識が高まった結果だと言えます。

 そして2012年度には、受講生は再び10人程度に減りました。社会的な要因によって受講者数にばらつきが生じるのは、技術と倫理について、日本の社会の意識がまだ高まっていないからだと言えるでしょう。

ハーバード大学ビジネススクールの変化

 米国では、ハーバード大学のビジネススクールが、我々と同じように技術経営に倫理を色濃く盛り込む動きを強めています。

 同ビジネススクールは、米国のビジネススクールを象徴する存在です。2008年のリーマン・ショックの影響もあり、従来の金儲けの追求によって企業価値を高めていく方向性や、経済、金融の仕組みや体制に世間から批判が集まりました。それを踏まえて、教育の内容を変えてきたのです。

 彼らが巧みだと感じるのは、学生を顧客と考えていることです。学生を顧客と見ずに、教えてあげる相手だとしか思っていない学校では、なかなかカリキュラムが変わらないのが現状です。その中で、ハーバード大学のビジネススクールは、これまでの金儲けの手法を追求して成果を最大化するビジネスモデル、例えばウォール街のビジネスモデルを教えるばかりでは学生にとって魅力がないことに気づいたのでしょう。

 MBAの象徴的存在である、「イノベーションのジレンマ」の著作で知られるクレイトン・クリステンセン教授も、自分自身の身に苦悩が訪れない限り、最も大切なことには気付かないというメッセージを発するようになっています(参照:「クリステンセン教授からの手紙」 )。

 「最も大切なことを、後回しにしてはいけない」

 クリステンセン教授は、これまでイノベーションを活発に引き起こせと主張してきた人物ですが、2007年に心臓発作で倒れ、その2年後には、ラグビーボール大の悪性腫瘍が見つかりました。幸運にも治癒しますが、2010年には脳梗塞で倒れ、言語中枢の機能に障害が残る状況に陥ります。そこで、これまで取り組んできたことが、いかに表面的だったのか、自分の身に起きてわかったと言っているのです。

 このクリステンセン教授の話は、技術倫理の最初の授業で取り上げている題材で、自分の身の上に起きる前に、認識しておかなければならないという教訓として示しています。クリステンセン教授ですら難しかったことを、われわれが実現できるかどうか、わかりませんが、そのようにありたいと考えています。

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「最も大切なことを、後回しにしてはいけない」の著者

田中 芳夫

田中 芳夫(たなか・よしお)

東京理科大学大学院教授

産ー官ー学での経験をもとに、これからの人たちと価値づくりを一緒に考えていきたい。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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