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市場経済への移行を容易にしたのは「二重構造」の手柄

『中国共産党と資本主義』第6章を読む(4)

  • ロナルド・コース

  • 王 寧

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2013年3月8日(金)

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 1980年代に中国社会主義経済に、意図せざる辺境革命(マージナル・レボルーション)が生じた。地方が主導する改革の柱である私営農業、郷鎮企業、個人企業、経済特区という4つの辺境パワーが、北京が主導する改革の停滞を乗り越えて、社会主義から資本主義への制度変化を担った。
 この節では『中国共産党と資本主義』におけるロナルド・コースの主張の核心部分が述べられる。

 中国の市場転換における2つの別個の改革の存在がとくに際立ったのは、1970年代末から80年代半ばの時期だった。1992年10月に開かれた第14回党大会で、社会主義市場経済が改革の主な目標として公式に採用され、そもそもは辺境革命によって中国経済に導入された私有セクターと市場原理が政治的に容認されていく。かつて周縁の経済主体であったものが次第に新興の社会主義市場経済の中心勢力となっていった。

 ほどなく第2の改革路線に対するイデオロギー的敵対心が弱まりだした。それでも90年代以降も、北京が指導する第一の改革と地方が主導する第二の改革、この改革の二重構造は中国の市場転換の特徴でありつづけた。地方が引っぱる改革路線の変わらぬ存在感と市場転換推進に果たした類のない先駆的役割は、90年代初頭の深センと上海の証券取引市場開設に、国有企業の民営化に、90年代後半からの工業団地の急増に、明瞭に表われていた。

徐々に不規則に起きる制度変化

 2つの別個の改革があることを認めると、経済改革の正しい全体像が得られるし、少なくとも関連文献によく見られる事実の誤りを避けられるばかりか、中国の市場転換の本質の理解がより深まる。とりわけ最も不可解な2つの側面、すなわち、改革の桁はずれの速さと、資本主義への移行が中国共産党主導で行われたことの探求に役立つ。

 スティーヴン・チュン(張五常)による制度変化(インスティチューショナル・チェンジ)の分析では、制度変化の費用の出所は2つある。代替制度を発見する情報コストと、変化自体を遂行または強制するコスト、とくに変化で利権が害されると思われる社会構成員に黙従を強いるコストである。

 ポスト毛沢東の中国の変化の趨勢を洞察し、非体系的な観察に裏打ちされた、シンプルだが強力な分析枠組みによって、中国は必ずや資本主義へ向かうというチュンの予測が可能になった。その分析は明晰で論理は厳密だったにもかかわらず、この枠組みには弱点があった。社会を均質な存在として、制度変化を1回きりの出来事として、一撃で社会が一掃され、優れた制度が劣った制度に取って代わるかのように扱っている。20年がたった現在でも、制度変化は社会科学の文献の多くでほぼ同様に扱われている。制度変化にはプロセスも時間も存在しない。

 制度変化の静的な見方は、経済学の比較静学分析と同様、制度変化の過程よりも結果または終点を主眼に置いている。中国のような大陸的スケールと顕著な地域差をもつ国の制度変化が単一の出来事として起こることは稀だ。そうではなく、徐々に不規則に起きる。したがって制度変化は、時間と空間のなかの過程として扱わねばならない。

 初期の変化が他の場所で同様の変化が起こるよう促すかどうかは、ほかの場所の主体(アクター)が初期の変化の結果をどう見るか、自分が向きあっている新しい制約と機会をどう評価するか次第だ。そのため、制度変化の初期の実験が勢いをつけてやがて広まるか、反感を買って拒絶されるかは予測がつけにくい。この発展の過程で、国家が突出した不安定要因となっているのは、他の主体が向きあう費用、インセンティブ、選択肢を変更できる統制者の役割と強制力を担っているからだ。

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