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食洗機を知らない人はほとんどいないのに、買わない人が多いのはナゼ?

夫の家事参加は“結婚5年目まで”がカギ

  • 本田 哲也

  • 池田 紀行

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2013年3月15日(金)

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 連載第1回で、「ソーシャルインフルエンス」の基本的な考え方は理解いただいただろうか。第2回からは、実際に世の中で起こっている事例や切り口で、より具体的に解説してみよう。実際、僕たちのまわりには、自分ゴト化や仲間ゴト化、世の中ゴト化がうまく起せていないがために、本来の商品価値が伝わっていなかったり、販売実績やシェアが上がらないという残念な状況にあるモノが少なくない。今回とり上げる「食洗機(食器洗い乾燥機)」もその1つだ。

(この連載は池田紀行と本田哲也が担当。今回は本田が担当しました)

 意外に思われるかもしれないが、日本で初めて食洗機が発売されたのは1960年。読者の皆さんと同性代、もしくは先輩世代だ。それから50年の時を経て、現在の食洗機の普及率は約25%(2010年)。およそ1200万台が日本の家庭に普及した。しかし、これは同時期に普及したほかの家電、例えば温水洗浄便座(30年で約70%普及)、空気清浄機(50年で約36%普及)などに比べると、全くもって低すぎる水準だ。アメリカなどでは90%近い普及率であることも考えると、(住環境などの条件を差し引いても)いまだ普及の余地はまだまだあるように思える。

 ではいったい何が、日本における普及を阻んできたのだろうか?いくつかの要因がある。

 消費者調査(パナソニック調べ)によると、「食洗機を買わない理由」の1位は「置き場がない」。続く2位は「価格が高い」――さもありなん、と頷かれた読者も多いだろう。日本の狭いキッチンでは、物理的な問題はこれまでどうしようもなかった面はある。しかしそれ以上に、「価格が高い」という認識がやっかいだ。そもそもモノの価値とは、絶対的な価格と同義ではない。モノの価値を認めれば、価格も認めるというのが消費者の心理である。食洗機の場合は、手洗いなどと比較して「“相対的に”高い」と思っている人が多いのだ。食洗機が「汚れた食器を自動で洗ってくれる機械」である以上、手洗い(日本人は意外に手洗いにこだわる)との比較構造から抜け出せず、永遠に「贅沢家電」のまま。これが食洗機の普及を阻む、消費者の心理と社会環境――つまり「自分ゴト化」が非常に弱く、その結果仲間ゴトも起こらない。まして世の中ゴト化するはずもない、という状況だったわけだ。

パナソニックの戦略

 このままでは、いつになっても食洗機の普及率は伸びない。ここに危機感を感じ、それを打破するための作戦を講じたのが、シェアNo1のパナソニックだ。食洗機の普及率向上は50年来の悲願。これまで「時短」や「節水効果」などを訴求し、テレビ広告も投入してきた。しかし、その時々で需要は高まるものの、ここ数年は下降気味だった。このタイミングで戦略的な仕掛けが必要と感じた同社は、商品とコミュニケーションの双方を刷新することを決定した。まず、これまでの技術を結集し、綿密な消費者調査を経て新商品が企画された。それが、2012年2月に発売が決定された「プチ食洗」。台所の「水切りカゴ」と同じサイズを実現し、価格も従来の5万円前後から、より購入のハードルが下がる価格帯に再設定。これで商品スペックとしては、物理的な制約や絶対価格のハードルは下がった。商品のコアターゲットも、いわゆるDINKSに代表される20~30代夫婦と決まった。

 しかし、それだけで、これまでに永きにわたって起こらなかった自分ゴト化や世の中ゴト化が起こるだろうか?パナソニックの広報は、このプロジェクトを必ず成功させるために、もう一度「食洗機」の社会的ポジショニングから考え直し、これまでの商品広告の枠に留まらない「ソーシャルインフルエンス」を戦略的に設計することを決定した。

 さて、問題はどのように自分ゴト化や世の中ゴトさせる文脈を構築するかだ。ここでパナソニック広報があらためて見直したのが、「夫婦や家族の幸せ」と「食洗機」の関係だ。そもそも「皿洗い」という家事を考え直すのだ。皿洗いと夫婦関係の調査を通じて、様々な仮説が生まれてきた。例えば、シンクに溜まっていく食器を見るとうんざりするものだ。これは直接的心理負担につながり、夫婦間のストレスにもなりうる。また、洗う面倒くささを考えると、ついつい食器や調理器具の数を制限してしまう。中には、スーパーで買ってきたお刺身をお皿に移すことなく、そのまま醤油をドバドバかける(!)といった大胆な家庭もあった。これは日本古来の食卓文化の乱れにもつながりかねない。

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