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日本への留学生を増やせ!

中長期的に日本の味方を増やす最も確実な方法

2013年3月22日(金)

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 今春は暖かくなるのが例年よりも早く、東京近郊は今週末にもサクラが見頃となるそうだ。私には毎年花見の頃になると思い出す、大学時代の苦い思い出がある。

 私が入った大学では当時、新入生は入学式の次の日に全員でバスに乗って旅行に出かけた。学生同士の親睦を深めるためで、この入学オリエンテーリングで仲良くなった友人とその後もつるむパターンが多かった。

 バスの座席は名前順に決められており、私の隣に座ったのはタイからの留学生S君だった。S君はたどたどしい日本語で私に一生懸命話しかけてきた。なぜ日本に留学したのか、この大学で何を学びたいか。そんな真面目な話だったと記憶している。

 正直に告白すると、自己紹介された時「なんだ、タイ人か」と思った。高校1年の時、家族でタイの首都バンコクに旅行したのだが、その印象がとても悪かったからだ。街全体が暗く、不衛生で、ところ構わず出現するムシに辟易した。家族全員でお腹を壊し(実際に母親は旅行中に病院の世話にまでなった)、「もう2度と来るものか」というのが当時の私のタイに対するいつわらざる気持ちだった。

 私がタイにどんな悪い感情を抱いていようとS君には何の罪もないのだが、若かった私は彼に冷たく対応した。入学オリエンテーリングで、心の狭い私が隣に座ったがために、S君は友人を作る大切な機会を逃してしまった。

 講義が始まると真面目なS君は教室の最前列に座った。私はと言えば、他の大半の学生と同様に、居眠りをするか講義の途中で抜け出しやすい後ろに座ることがほとんどだった。やる気のない日本人学生を見て、S君はしばしば表情を曇らせた。恵まれた環境に育った日本人はなぜ一生懸命に勉強しないのか、そんな感情を抱いていたのかもしれない。

 2年生になる前にS君は米国に留学するためにニューヨークに行ってしまった。友人の話によると、S君のお父さんはタイのお偉いさんで、そのお父さんの意向で米国に留学することになったという。「なんだ、結局アメリカかよ」と私は思ったが、同時にS君が日本で学ぶ意欲を失った一因は自分にあったかもしれないと自責の念にも駆られた。

 今となっては、学生時代の自分は何と愚かだったのかと恥じ入るばかりだ。不安と期待で一杯の留学生に対して私の態度は最悪だった。

 昨年、出張で久方ぶりにバンコクを訪れた時、24年前との変わりように驚いた。近代的な都市に生まれ変わったバンコクはインドシナ半島の中心地として急速に発展していた。今頃S君はどんな活躍をしているだろうかと彼に思いを馳せた。家柄も良く、真面目で、英語も日本語も話せるS君は“スーパーエリート”として政府や大企業の中枢で活躍しているかもしれない。可能ならば学生時代の不実を詫びたいと思ったが、後の祭りだった。

ラオスで出会ったスーパーエリート

 独立行政法人「日本学生支援機構」によると、2011年に海外から日本にやって来た留学生は13万8075人。中国からが8万7533人と半分以上を占め、次に韓国(1万7640人)、台湾(4571人)、ベトナム(4033人)、マレーシア(2417人)、タイ(2396人)と続く。日本への留学生はアジアの途上国からが圧倒的に多い。欧米に比べて近いという理由もあるだろうが、アジアで最も発展した日本で勉強したいという憧れの気持ちもあるはずだ。

 全員が4年生大学に行くわけでもなく、短期間の語学研修の人もいるだろう。とは言え、常時十数万人の留学生が日本で生活していることになる。彼ら・彼女らが日本にどのような印象を抱いて帰国するのか、自分の経験を振り返り、最近気になって仕方がない。貧しい国々から物価の高い日本に留学することは経済的に大変な苦労があるのは間違いない。中にはお金持ちのボンボンもいるかもしれないが、ほとんどの留学生は両親や親族の支援を受けて日本にやって来る。世話になった人に恩返しするために留学生は必死になって勉強する。帰国すればエリートとしてその国の発展に貢献する人も少なくない。

 そうした人材は日本にとっても貴重な存在だ。日本語を話し、日本人の考え方や仕事の進め方を理解している元留学生は、日本とその国を結ぶ架け橋となる。今の日本にとって、中国や韓国だけでなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を中心とするアジア各国は極めて重要なパートナーである。そうした国々と日本との外交・経済関係において、元留学生達が必ずどこかで活躍してくれているはずだ。

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「日本への留学生を増やせ!」の著者

坂田 亮太郎

坂田 亮太郎(さかた・りょうたろう)

日経ビジネス副編集長

東京工業大学大学院修了後、98年日経BP入社。「日経バイオテク」「日経ビジネス」を経て2009年から中国赴任。北京支局長、上海支局長を経て2014年4月から日経ビジネスに復帰

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官