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中国も「失われた20年」を経験していた

格差、環境、社会保障……。全人代で繰り返される課題表明

2013年4月4日(木)

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 「明日、会場に行く人は朝6時半発。“紙”取ったら戻ってくるのは誰?」

 毎年、中国の全国人民代表大会(全人代)の開幕前日、マスコミ各社で繰り広げられているだろう風景だ。

 全人代は、天安門に向かって後方西側にある人民大会堂で開かれる。午前9時に始まるが、記者やカメラマンはその2~3時間ほど前から延々と並び始める。

 いわゆる「紙取り」のためだ。

 紙は、ここでは時の首相が全人代の冒頭で読み上げる政府活動報告(施政方針演説に相当)の外国語訳を指す。政府活動報告は毎回1万字を超す長文なので、夕刊に盛り込もうとすれば、やはり訳文があった方が間違いが少ない。これは恐らく万国共通で、会場となる大ホール前の通路で活動報告の訳文が配られると、あらゆる国の記者が押し寄せてくる。部数は、ボンヤリしているとなくなってしまうほどの数しかないので、行くしかない。

 共産党がすべてに優先し、権限は限られる中国政府。全人代はその立法府であり、最高権力機関と位置づけられているが、実態としては「政治ショー」の色彩が濃いと言わざるを得ない(全人代に「日本の国会に相当」という注釈をつけると、読者からクレームが来るのはこのためだろう)。

 それでも、要人が勢揃いするし、党からはなかなか出ない数字が多く発表されるので、それなりに重要なイベントではある。ヤマの1つは、やはり初日の政府活動報告だ。

政府活動報告に集約される問題意識

 政府活動報告を読めば、中国がどこへ向かおうとしているかがそれなりにうかがえる。初めは長さにたじろぐが、実際にはパターンがあるので、慣れれば少しはかいつまんで読めるようになる。

 そのパターンは年よって若干の違いはあるが、まず(1)GDP(国内総生産)やインフラ整備の進捗、消費の伸びなどから共産党による政治がうまく行ったとの自画自賛から始まり、(2)今年の成長率目標や財政支出などの予算の説明をした上で、(3)これまでの取り組みや今後の提案を通じて貧富の格差や環境破壊などの問題点を示し、(4)香港やマカオ、台湾の統一といった領土面の主張を述べて終わる、というスタイルは概ね一貫している。

 また、今年がそうだが、政府活動報告には5年おきに「総括編」とでも言うべきバージョンがあり、やや俯瞰した内容になる。そして今回は温家宝・前首相にとって最後の報告になった。いささか旧聞ではあるが、内容を少し要約したい。

 (1)については、2012年のGDPが51兆9000億元(約778兆円)となり、農村部の1人当たり純収入が年平均で9.9%伸びたなどと誇っている。低価格住宅の整備やPM2.5の観測地点を増やしたなどと記す一方で、空母「遼寧」が就役したとも謳っている。(2)は成長率目標7.5%、財政赤字1兆2000億元(約18兆円)、インフレ率3.5%といった、日本でも報じられている数字が並ぶ。

 (3)は総花的だが、消費拡大や投資の効率化、供給過剰体質の是正、環境保護、省エネ、「三農問題」、就業問題、社会保障の拡充、法治主義といったキーワードを今後の課題として挙げている。

 リーマンショック後に打った4兆元(約60兆円)規模の経済対策が過度な投資を呼び、民間企業や地方財政の疲弊を招いたのは今となっては疑いようもない。経済は6~7%の成長はできるだろうが、農村からの人口移動もピークアウトしつつあり、環境問題も相まって上ブレの可能性はかなり低くなっている。そして、経済格差は拡大し、産業の高度化といった課題も先送りになったままだ。政府活動報告を読めば、こうした問題を政府も認識はしてはいることが分かる。対処したか、また対処する気があるかは別問題だが。

 (4)は香港、マカオの1国2制度が機能していること、台湾との「和平統一という大業」といった文言がいつものように続いている。

 何年か活動報告を見てきたが、既視感をどうしても覚えてしまう。中国は多くの問題を抱えている。けれど共産党による統治で経済面を中心に着実に前に進んでいる。ただ課題はまだ残っているので頑張ろう、というロジックだ。このスタイル、本当に変わっていないのか。思い立って10年前、20年前の政府活動報告をめくってみた。

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「中国も「失われた20年」を経験していた」の著者

張 勇祥

張 勇祥(ちょう・ゆうしょう)

日経ビジネス記者

2012年から日経ビジネスの記者。転々と部署を異動してきた器用貧乏。それでも、何とか中国経済はモノにしたいと願う中年記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師