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働いている割には実質所得が伸びないのはなぜか

GNIから考える成長戦略~アベノミクスの中間評価(その2)

2013年4月24日(水)

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 アベノミクスの3本の矢のうちの第3の矢「民間投資を呼び起こす成長戦略」の全体像は検討中であり、まだ評価を下すような段階ではない。そこで本稿では、検討過程で浮かび上がりつつある問題の中で、私が重要だと思う点を紹介してみたい。今回はGNI(国民総所得)という指標から成長戦略を考えてみることにする。

最近注目されているGNI

 現在検討されている成長戦略の中で、GNI(国民総所得:Gross National Income)という指標が脚光を浴びつつある。3月8日に開催された経済財政諮問会議では、民間議員が連名で「経済財政政策から見た目指すべき国家像と成長戦略への期待」という文書を出した(PDFの資料はこちら)。その中に「成長戦略が前提とすべきマクロ経済的視点から見た定量的目標」という項目があり、そこには「実質GNI(実質GDP、海外からの純所得、交易利得)の持続的拡大、10年以内GNI拡大目標値設定」と記されている。安倍晋三内閣で策定されつつある成長戦略においては、GNIを重視していこうと姿勢が示されかけているのだ。

 このGNIという数字自体は、内閣府の経済社会総合研究所が毎四半期発表している国民経済計算速報にもちゃんと入っているのだが、これまではあまり注目されてこなかった。四半期速報を報じる新聞でも、GDPについては報じられるが、GNIに言及されることはほとんどない。多分大多数の国民は「そんな言葉は聞いたことがない」と言うだろう。

 そのGNIが注目されるのにはそれなりの理由があり、それを考えていくと、日本の成長戦略の根幹にかかわる問題が見えてくる。そこでまず、「GNIとは何か」というところから考えてみよう。

名目で見た場合、GDPとGNIはどこが違うのか

 我々が普段目にしている経済成長率は、GDP(国内総生産:Gross Domestic Products)の伸び率である。現在はGDPが中心だが、かつてはGNP(国民総生産:Gross National Products)が中心概念であった。1971年に、朝日新聞社が『くたばれGNP』という本を出して、公害などの観点から成長至上主義を批判したことがある。当時はGNPが成長の指標だったことが分かる。

 では、GDPとGNIはどこが違うのか。我々は「日本全体でどの程度の大きさの経済活動が行われているのか」を知りたい。この点で、現在最も使われているGDP(国内総生産)は、その名の通り、「日本という国土(国内)の上でどの程度の生産活動が行われたか」を示している。生産活動が増えていけば、雇用機会は増え、国民全体の生活水準は高まるはずだ。それが経済成長である。

 同じようなものとして、「国内総支出」「国内総所得」というのもある。この2つは名目値で見る限りは、国内総生産と同額になるはずだ。例えば、我々が200万円の自動車を購入したとしよう。この時、200万円の消費か行われ(国内総支出の一部)、200万円の生産が実現しており(国内総生産の一部)、誰かが200万円の所得(国内総所得の一部)を手にしたことになる。こうして一つの経済取引に対して「生産」「支出」「所得」がワンセットで同額動くのだから、日本全体の生産・支出・所得の合計は等しくなるはずだ。これを「三面等価の原則」という。

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「働いている割には実質所得が伸びないのはなぜか」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士