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給料が伸びないのは「技術革新」のせい?

仕事がラクになるのはいいことばかりじゃない

2013年5月7日(火)

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 前回解説しましたように、給料に労働者個人の業績・成果が反映されているのはわずか数%です。もちろん、会社の業績が上がればボーナスが増えます。ですが、それは個人でどうこうできるものではありません。

 4月25日に「平成24年賃金事情調査」の確報が公開されましたが、基本給に占める「業績・成果」の比率が5.3%に下がりました(平成23年度の同調査では7.1%)。世間的には、「これから業績・成果が占める割合が増えていくだろう」と考えられていたと思いますが、まだまだそうはならず、マルクスがいう「労働力の価値」を中心に決まっているということでしょう。

 全体としてみると、日本人の給料はここ10年以上、減少傾向にあります。再度、マルクスの理論に重ねて、なぜ給料が下がってきたのかを考えてみます。どこに「給料の低下圧力があるか?」です。

 結論から言うと、給料の低下圧力があるのは、「技術革新」と「社会構造の変化」です。そこで今回は「技術革新」について解説します。技術革新の「せい」で、“いざなぎ超え”と呼ばれたかつての好景気の時期にも給料が下がり続けた、というのが私の1つの結論です。

その仕事をする知識・スキルを身につけるための労力

 労働力の価値とは、「労働の再生産コスト」です。これは簡単に言うと、その労働者が明日も同じ仕事をするために必要なものの合計です。人が働くには、その仕事をする体力と知力(知識・経験)が必要です。労働者に知力と体力がなければ働いてもらうことができません。

 例えば、フルマラソンを走り終えてエネルギーがゼロになってしまった人を、すぐに働かせることはできません。労働者として働いてもらうためには、食事をして、睡眠(休息)をとって、再びエネルギーを満タンにしてもわらなければいけませんよね。この時にかかるコスト(食費、睡眠のための住居費など)は、労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。これは前回説明した通りです。

 一方で、小さい子どもを会社に連れてきて、「じゃ、あとよろしく」と、みなさんと同じように働いてもらおうとしても無理です。仕事に必要な知識や経験がないからです。会社に有益な労働者となるには、これらの知識・経験を身につけてもらわなければいけません。この時にかかるコストや労力(学費・研修費、勉強時間など)も、労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。

 そして、これらの「労働力の生産コスト」を積み上げたものが、そのまま労働力の価値になり、その労働力の価値が基準となって、みなさんの給料が決まっていくのです。

 この知識、経験、技能面での再生産コストが、あなたの給料に加味されていることに注目すべきです。つまり「同じ労働をするために、ゼロから知識を身につけたら、どれくらいコストがかかるか?」という視点です。

 弁護士の時給がなぜ高いのか?

 それは難しい仕事をしているから、ではない。難しい仕事なら世の中にいくらでもあります。

 医者の時給はなぜ高いのか?

 人の命を扱っているから、ではない。「人の命を扱う」という意味では、看護師や介護士も同じはずです。それなのに、看護師や介護士の時給よりも、医者の時給の方が圧倒的に高いのは、みなさんも容易に想像がつくでしょう。

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「給料が伸びないのは「技術革新」のせい?」の著者

木暮 太一

木暮 太一(こぐれ・たいち)

経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、社団法人教育コミュニケーション協会の代表理事として、相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、企業・大学向けに多くの講演活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官