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患者を待たせる病院に見る日本のお粗末なIT事情

東京海上日動システムズ・横塚裕志社長と徹底対談(第2回)

2013年5月15日(水)

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 今回のシリーズでは、東京海上日動システムズの横塚裕志社長と、ITを使いこなすとは、どのようなことなのかを考えていきたいと思います。われわれは、ITの遅れによって、日本の様々な産業が遅れを招いてしまうことに危機感を抱いています。そこでまずは、日本ではあまり理解されていないITの活用法や、その背景を探ります。次に、日本のIT活用が、世界の先頭から2~3周遅れている原因を探ります。

 さらに、最近(と入ってもここ数年ですが)、話題に上ることが多い、ビッグデータへの取り組み方について、議論していきます。ビッグデータというと、日本では、ハードディスクやデータベースを売ることばかり(データをためこむことばかり)、考えられている傾向が見受けられます。そうではなく、ビッグデータを使うことで、どのような価値が生まれ、どのようなサービスを実現できるのかが示されるべきです。

 ITを使いこなすにも、現在の日本は、「ITリテラシー」や「サイエンス・リテラシー」と呼ばれる、科学的な教養に乏しい社会です。この原因や解決策について、考えていきます。

病院のデータを管理するのはIT関連メーカー

横塚:前回お話しした市役所だけでなく、医療のシステムも同様に無駄が見受けられます。MRI(磁気共鳴画像装置)用システム、○○用システムなどと、すべて縦割りの診療分野ごとに独自のITシステムで構成されていて、横串で通すようなシステムは数少ないと思います。

田中:しかも、日本の病院向けのITシステムは、IT関連メーカー各社に分担されている状態で、他の企業は受注するのが難しい状況にあります。この理由は、病院で取得したデータをIT関連メーカーが管理する仕組みになっているからです。本来、こうしたデータは、患者個人の所有物であり、IT関連メーカーのものではありません。

 横塚さんの東京海上日動システムズの場合、データを自ら管理しているので、こうした懸念はありませんが、IT関連メーカーにデータの管理を任せてしまうと、ITシステムの肝を握られた状態になり、継続してそのIT関連メーカーと組んでいかざるを得ません。

 こうした状況は、一度陥ってしまうとなかなか打破できず、サイエンス・リテラシー、ITリテラシーの高いCIOの存在なしには、コントロールすることが難しいでしょう。

 逆に、IT関連メーカーから見ると、横塚さんのような方は嫌でしょうね。何を提案しても、肝心な部分は、自分で手がけると主張してくるからです。

横塚裕志氏
東京海上日動システムズ社長。1973年一橋大学商学部卒業、東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社。情報システム部長、執行役員IT企画部長などを経て2006年から現職を兼務。2007年東京海上日動火災保険常務取締役。2009年6月同社を退任し、現職に専念

横塚:最近のIT関連メーカーは、自社製品の売りこみの話ばかりで、われわれの悩みを解決しますよ、という姿勢ではないので話がかみ合いづらいのです。

 われわれの悩みの解決には、IT関連メーカー1社の製品だけでは、実現できません。どんな産業でも、顧客の悩みの解決が要求されることでしょう。その当たり前のことが、実現できなくなっているので、気の毒に感じています。

 医療系のITシステムを例に話すと、縦割りの診療科ごとにITシステムが導入されていることも無駄ですが、もう1つ大きな無駄を感じます。それは予約に基づいて来院した外来患者が、診療が始まるまでに待つ時間をできるだけ短くできるような、病院全体の経営の観点で構築されているシステムが、ほとんど見受けられないことです。

 韓国などの病院では、予約して来院した外来患者は、ほぼ待つことなく診察を受けることができます。病院経営のために必要な、外来患者の混雑の状況、手術室の状況、ベッドの空き状況、医師の役割分担などをダッシュボード・システムで一覧できるようにしており、リアルタイムで管理し、改善しています。

 これに対してほとんどの日本の病院は、予約した時間に来院しても、長い時間待たされることがあります。個々のITシステムは存在していても、全体として最適な管理を目指していく発想がない限り、解決できません。病院では患者を待たせたらいけないという発想を持ったマネジメントシステムが必要です。

 この原因は病院側とシステム側の両方にあり、様々な課題が重なって、予約時間に来院してもすぐに診断できない状況になっています。このように、日本の国民は不便を受け入れているというか、厳しい状態に置かれていると思います。その割に、世界的に見てITへの投資額は大きいのです。

 投資額は大きいのに効果は小さく、患者は待たせたままなのです。これは日本のITを巡る縮図だと言えます。

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「患者を待たせる病院に見る日本のお粗末なIT事情」の著者

田中 芳夫

田中 芳夫(たなか・よしお)

東京理科大学大学院教授

産ー官ー学での経験をもとに、これからの人たちと価値づくりを一緒に考えていきたい。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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