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果たして日本は海洋国家なのか?

再考・海洋国家日本の構想

2013年5月9日(木)

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 この連載のタイトルは「海の国際政治学」。国際政治の中で海が果たす役割に注目するとともに、海から国際政治の本質を理解することを目指している。

 四方を海に囲まれた日本は、直面する国際政治・安全保障上の課題の多くが海に関連している。尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立が深刻さを増しているのはその典型だ。中国の海洋進出は東シナ海だけでなく、日本にとって死活的な海上交通路である南シナ海でも紛争を引き起こしている。

 海で起こっている問題は、島の領有権や、漁業権、海底資源をめぐる角逐だけではない。北朝鮮が核・ミサイルによる恫喝を繰り返している。大量破壊兵器関連物質も主に海を通じての拡散している。北朝鮮と同様に核開発をめぐって国際社会と対立するイランは、ホルムズ海峡の封鎖をほのめかしている。ソマリア沖海賊は活動範囲を大幅に広げ、今やホルムズ海峡に迫っている。他にも海上テロ、密輸、人身売買などの組織犯罪が海洋秩序を脅かすなど、世界の海では実に様々な問題が起こっている。

 これら個別の課題を検討するためには、国際政治において海が果たしてきた役割について理解する必要がある。大陸国家の海洋進出、航行の自由の侵害、通商破壊、そして海賊の跳梁などは歴史を通じて繰り返されてきたことで、新しいことではないからだ。

 初回である今回は、まず導入として海洋国家とは何か、果たして日本は海洋国家なのかという命題について考えてみたい。

海洋国家とは何か

 かつて、人類は川や海を「障壁」ではなく「航路」とみなすことによって、文明への大きな一歩を踏み出した。水が生み出す浮力は、より遠い地域へのアクセスを可能にした。人類は交易を通じて有形の富――世界の様々な地域の特産品など――だけでなく、無形の富――知識と情報――も手に入れるようになった。海洋国家の歴史はアジア、ヨーロッパ、そしてアフリカの文明が交錯する地中海を舞台に始まった。ヨーロッパが大航海時代を迎えると海洋国家が新大陸とアジアの富を独占するようになり、経済のグローバル化が始まった。

 一方、海上交易の発展は、船が運ぶ富を狙う海賊と、通商権益をめぐって敵対する勢力同士の抗争を生み出した。その中で海上交易を守るために海軍が生まれた。海軍の主要な役割は今も昔も自国の海上コミュニケーション(交通)の保護と敵のそれの破壊である。通商と海洋の支配を通じて国家の繁栄を築く重要性をシーパワー理論として提唱したアルフレッド・マハンが述べたように、通商の保護こそが海軍の存在意義なのだ。このため、海洋国家の歴史は通商をめぐる争いの記録でもある。

 それでは海洋国家とは何か。それは、国家が海に面しているという地理的現実や、国家が漁業や海運などの海洋経済に依存しているという経済的現実だけでは定義できない。「海洋国家」(maritime power)とは19世紀後半に地政学で使われるようになった概念で、「大陸国家」(continental power)の対義語として生まれた。大陸国家が国家の力の源泉および生存と繁栄の基盤を陸に求めるのに対して、海洋国家はそれらを海に求める。

 大陸国家は陸の国境で他国と接しているため、外敵の侵略から長い国境線を守るために巨大な陸軍を必要とする。巨大な常備軍を維持するためには強権的な政治体制が必要だ。したがって社会は閉鎖的かつ保守的で、個人の自由より国内の秩序の安定を重視する。大陸国家の経済は広い国土を活かした農業が中心となり、封建的制度の下で大地主が農民に耕作地を与え、農民は労働力と兵力を提供する。

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「果たして日本は海洋国家なのか?」の著者

小谷 哲男

小谷 哲男(こたに・てつお)

日本国際問題研究所研究員

同志社大学法学研究科博士課程単位取得退学、岡崎研究所等を経て、2012年4月から日本国際問題研究所研究員。日米関係と海洋安全保障問題を専門とする。「海の国政政治学」の確立に向けて奮闘中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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