• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

上海でマスクをしているのは「日本の会社員」だけ?!

2013年5月14日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

「おやっ、あなた日本人だね? 今、中国と日本はバチバチ(両手の人さし指をクロスさせる仕草をしながら)ケンカしているでしょ? まったく困ったもんさ」

 安倍内閣の閣僚が靖国神社に参拝した当日の4月21日午後。上海市内でタクシーに乗り込んだ私の顔をのぞき見て、すぐさま運転手が声をかけてきた。微妙な日中関係の中、私は中国で巷のネタを取ることはあまりしないタイプだが、人懐っこそうな運転手に乗せられて、ついついおしゃべりしてしまった。

「そうだよね。私たち日本人もみんな心配しているのよ」

「そうだろ? わかるよ。そりゃそうさ。もし本当に戦争にでもなったら一体どうするよ? 困るのは我々、老百姓(庶民)さ。政府の連中や金持ちなんかじゃない。前線に立たされるのはいつだって無力な庶民なのさ。中国人だろうが日本人だろうが、誰も戦争なんか望んじゃいないよ。なぁ?」

「同感! その通りですよ、運転手さん!」

 私は思わず、運転手とがっちり手と手を取り合いたくなり、身体を乗り出していた。

 運転手は日本人である私にケンカを売りたくて話しかけてきたのではなかった。靖国参拝のことも知らなかったようで(私もその時点ではまだ知らなかった)、私が車を降りるときには「でも最近はようやくちょっと関係が落ち着いてきたようだな。やれやれ。よかったよ」といって笑顔でおつりを渡してくれた。

 運転手の「ところであれかい? 日本は小さい国だって聞いたことがあるけど、面積は中国の半分くらいなのかい?」と聞かれたときはさすがに座席からずっこけそうになったが、私のことを記者だとは夢にも思っていない、中国の庶民の率直な声を聞くことができ、明るい気持ちになった。

日常の小さなズレのほうが問題かもしれない

 靖国神社の春季例大祭に合わせた閣僚参拝のニュースを聞いたのは、その晩遅く、ホテルに戻ってからだ。ニュース番組の内容は、その前日に四川省で起きた大地震の報道が中心で、参拝問題はできるだけ抑えめに、淡々と伝えているように感じた。

「う~ん、またですか、って感じですね。もはや季節の恒例行事という感じでしょうね(笑)。日本政府が何度もやっていることだから、私はもう、なんとも思いません。中国人でも、別にいちいち気に留めている人はいないんじゃないかな。ああいう鈍感なことをやられたら、中国政府としては反発せざるを得ない。ただ、それだけのことですよ」

 上海の日系企業で社長秘書として働く中国人女性、朱零(29歳)は屈託のない笑顔で語り出した。彼女には別のテーマで取材をお願いしていたのだが、打ち解けてきたのでこの話題も振ってみたところ、こんな気の抜けた答えが返ってきた。このニュースのあと、ほかにも数人の中国人に聞いてみたが、朱と同じように、あきれたり、ただ苦笑いをするだけで、怒りを示したり、強い口調で意見を言ったりする人はなく、冷静な態度だった。

 毎日、地元の人と一緒にレストランで食事をしたが、店員に嫌味を言われたり、日本人だからといって罵声を浴びせられたりしたことも、一度もなかった。むしろ、みんな驚くほど親切で、昨年秋の嵐のような反日デモは、まるで「なかったこと」のように感じられた。

 一連の靖国参拝や反日デモとは一見、関係ないように思われるが、今回、私が上海取材に出かけたテーマのひとつは、「日本にチャネルのない一般の中国人は、日本のどんなところを誤解しているのか?」ということだった。昨年9月にNBOに書いた記事『えっ、「日本は中国と戦争したがっている」って?』でも紹介したように、日本人と接点がない中国人は、反日デモの際、「もしかしたら、日本軍がまた中国を攻めてくるんじゃないか」と真剣に思っていた人が少なくなかった。

 日本人からしてみれば「まさか」と仰天するような反応だったが、生身の日本人を知らない中国人の中には、これ以外にも「日本に対する大いなる誤解が、実はけっこう多いのではないか。その誤解が解けないために、お互いに「きっとこうだろう」と相手の気持ちを決めつけてしまい、“小さな不幸”があちこちで発生し、それが両国民の感情に悪影響を及ぼしているのではないか?」。昨年9月に書いた原稿は、そういったことを私に想像させ、新たな取材テーマを見つけさせてくれる発端となった。

コメント11件コメント/レビュー

とても参考になりました。他国の異質性は厄介な問題です。人材交流などで実体験するのが一番なのでしょうね。また、これだけ他国の情報や知識が集まれば、個人差は別として、経験する前にある程度は準備できる気もするのですが・・・。外交も海外ビジネスも、そろそろ国の異質性による摩擦解消を改善する時機ではないでしょうか。(理想論で申し訳ありません)(2013/05/14)

「再来一杯中国茶」のバックナンバー

一覧

「上海でマスクをしているのは「日本の会社員」だけ?!」の著者

中島 恵

中島 恵(なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年、山梨県生まれ。1990年、日刊工業新聞社に入社。退職後、香港中文大学に留学。1996年より、中国、台湾、香港、東南アジアのビジネス事情、社会事情などを執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

とても参考になりました。他国の異質性は厄介な問題です。人材交流などで実体験するのが一番なのでしょうね。また、これだけ他国の情報や知識が集まれば、個人差は別として、経験する前にある程度は準備できる気もするのですが・・・。外交も海外ビジネスも、そろそろ国の異質性による摩擦解消を改善する時機ではないでしょうか。(理想論で申し訳ありません)(2013/05/14)

なんだか『…不毛なコラムだったなぁ」という感想だけが残ってしまった。前半の日本人上司の方々には同じ日本人の私でも共感できないし、約束をメモらない・忘れる中国人にも当然共感できないし…。お国柄が違うって言うより、個人の人間性の問題で、すれ違うタイプの人だけを取り上げた様な? 先日、川口さんが中国要人と会う為に議会をドタキャンしたニュースがありましたが。アレも約束を忘れられ、会談が翌日(帰国日)になっちゃたのかしら?(2013/05/14)

2年間、中国に住んでいましたが、やはり自国以外で生活をして見なければ、何も見えませんし理解も不可能だと思います。短い期間だったので、結局私自身も未だ理解不能な部分もありますが、その期間は自分の人生にとって、とても貴重な時間になったと思います。チャンスがあれば、積極的に国外に出て体験して理解をする事が大切だと思いました。日本人は昔の歴史的な影響か分かりませんが、海外に対して未だオープン?で無い様に思われるので(自分含め)、見て触れていない物に対して憶測で物を言ったり考えたりするのは如何なものかと、考えさせられました。(2013/05/14)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長