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シーパワーを欠いたにも関わらず幸運だった古代日本

「島国」日本の形成

2013年5月17日(金)

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 今回は、古代日本の形成において、海がどのような役割を果たしてきたかを見る。

 海の国際政治学の先駆者である故曽村保信・東京理科大学教授は、『海の政治学』を1980年代に著した。その中で、日本は黒潮の流れによって作られたと書き始めている。フィリピン東岸から日本列島の太平洋側に沿って流れ、房総半島沖を東に抜ける黒潮は世界最大規模の海流である。この流れに乗って北上することは比較的容易だが、これに逆らって進むことは原始的な帆船の時代には難しかった。

 これまでの考古学の研究によれば、日本人の祖先は、日本列島がまだ大陸と地続きだった更新世に移り住んだ原住民に加えて、縄文時代に黒潮に乗ってやってきた南方系の渡来人、および弥生時代に朝鮮半島を経由してたどり着いた大陸系の渡来人などを中心に形成された。曽村氏は、日本民族の形成過程の特徴として、渡来人たちが通商の動機を持たずに日本列島に定住するようになったことを指摘している。

 一方、同じ頃、古代オリエントや地中海世界では、フェニキア人やギリシャ人が海を交易路とみなして活躍。文明の交錯する世界史を作り上げていた。故高坂正堯・京都大学教授は、地中海と日本の周囲の海を比較して次のように述べている――地中海は「世界史の海」として登場したが、日本を取り巻く海は「海であって海ではなく」、コミュニケーション(交通)の手段としては使われていなかった。

 だが筆者は、日本の国家形成過程においても、海はやはり重要な役割を果たしたと考えている。大和朝廷の成立を扱った神話は、九州と大和を結ぶ瀬戸内海が海上コミュニケーションの手段として成立する過程を表しているとも言える。神武天皇は、九州の日向を発ち、瀬戸内海の海上交通の要衝をおさえ、沿岸部を平定しつつ東征した。日本武尊の西征も、瀬戸内の海の道の物語である。

 これらは史実ではない。だが、少なくとも当時の瀬戸内海が海上交通の要衝となっており、それを支配することが国家統一の重要な要素であったことを示している。その中で水軍も生まれた。水軍は地方の豪族が所有する半独立的な組織で、時には国家権力に協力し、時にはこれに逆らった。

日本は大陸と断絶していたわけではない

 また、日本は外界と完全に断絶していたわけではない。日本は玄界灘を走る細いコミュニーション線で大陸とつながり、文化を取り入れてきたからだ。縄文時代は狩猟など採集経済が中心だったが、弥生時代には大陸から稲作と金属器が伝わり、農耕経済が定着した。さらに、渡来人(帰化人)が技術者として半島から日本に渡り、機織や冶金、灌漑、造船などの大陸文化を伝えた。彼らは、生産力の向上に貢献しただけではない。仏教の伝来は、日本人の精神そして統治のあり方に大きな影響を与えた。

 さらに、4世紀ごろに国家を統一した大和朝廷は、進んだ生産技術や鉄資源を求めて朝鮮半島に勢力を伸ばし、南部の伽耶(または任那)を支配するようになった。日本の半島進出は経済的動機に基づいていたと言える。当時、半島では高句麗、百済および新羅がしのぎを削っていた。高句麗による南方への圧力が強まったため、百済と緊密な関係にあった大和朝廷は半島へ進出したのだ。

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「シーパワーを欠いたにも関わらず幸運だった古代日本」の著者

小谷 哲男

小谷 哲男(こたに・てつお)

日本国際問題研究所研究員

同志社大学法学研究科博士課程単位取得退学、岡崎研究所等を経て、2012年4月から日本国際問題研究所研究員。日米関係と海洋安全保障問題を専門とする。「海の国政政治学」の確立に向けて奮闘中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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