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だれにでも楽しくマンガが描ける方法

2013年5月30日(木)

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 先月のことだが、柄にもなくワークショップというものを体験してきた。

 体験してきたというと、まるで誰かの何かのワークショップを受講してきたみたいだが、驚くべきごとに講師には私の名が書かれている

 80年も生きていれば色んなことがある。
 わしは唐の国でよい声でなく黄金のウグイスを見た。
 というのは手塚治虫『火の鳥』鳳凰篇の吉備真備のセリフだ。
 世の中には私あたりを講師に招こうという酔狂な団体が存在するのだった。

 自慢ではないが、私は人に伝えたり教えたりするような技術は、何一つ持ちあわせていない。

 反対に不得意なことならゴマンとある。
 なかでも最も不得意なのがマンガを描くことであるのは、読者や編集者諸氏にはすっかりおなじみのことと思っていた。なのに、なんということであろう、このワークショップのタイトルには「マンガを描いてみよう!」と、眼を疑うような文字が。

 悪いことはできない。

 しばらく、ろくにマンガらしいマンガを描いていないと、そういう責め苦というか罰が当局から与えられるのである。

 さらに、紹介文にはダメ押しのように「だれにでも楽しくマンガが描ける方法をプロの漫画家とり・みきさんがお教えいたします」などと書かれている。

 そんな方法があったら、いますぐ私が教えてほしい。

 いったい、このような講座がカルチャースクールや大学にあったとして――これから私は、言ったからといって誰からも喜ばれないし、かつ自分の得にもならない身もふたもないことを言うが、身もふたもないということは、ほぼ真実ということでもある――人はまず、その講義内容よりも「講師名」を確認し、授業の信頼性を推し量るのが人情だ。

 ツイッター上の同業者には、現役のマンガ家としてすばらしい作品を描きつつ、かつ教鞭を執ってらっしゃる人達が何人もおられる。

 だが、さほど名も知られていないロートルのマンガ家(私のことです)が教える「マンガの描き方」なんて、はっきりいって誰もあまり受けたいとは思わないはずだ。まず、誰よりも自分が生徒だったらそう思う。何度も引用している名セリフ「私を会員にするようなクラブには入りたくない」の心境だ。

 もっとも、「名選手必ずしも……」といういいまわしがあるように、現役時代の成績はあまりよろしくなくとも、あるいは実作品はさほど面白くなくとも、コーチやチューターとしての才能がある人は、ときとして存在する……ことも、我々は知っている。

 私はこのように、マンガ家にしては文章原稿を書く機会を多くいただいているので、どうも、そういうこと(マンガを言葉で説明すること)が得意なのではないか、と勘違いする人がたまにいるらしく、実をいうと、酔狂で奇特なお誘いを受けたのは今回が初めてというわけではなかった。

 それでも前出の理由から、たいていはお断りしてきたのだが、さまざまなしがらみで引き受けてしまったことが三十数年間で二度だけある。

 一度目は京都の某専門学校で、このときは初めての経験でもあり、レジュメも何もなくて、受講生の質問に答える、という質疑応答の1時間だった。
 この授業のことを、私は以前、別のエッセイでこう書いている。

 「私は、漫画はこう描くべきだとか、かくあらねばならぬとかいった考えをまるで持ち合わせていない」「私が好き勝手描くとむしろ編集者は困った顔をするので『まず、雑誌に載る』ことをとりあえずの目標としている生徒達には、百害になるかもしれないのである」

 そう、知名度の問題だけでなく、そもそも確とした指針や規範がないのに、人にものを教えることはできない。

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「だれにでも楽しくマンガが描ける方法」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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