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部下に絶対服従を強いるサムスン

トップダウンは絶対か(下)

2013年6月13日(木)

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 前回の本コラムでは「トップダウンは絶対か」の前編として、ホンダ時代経験した技術論議を紹介した。創業者である本田宗一郎氏の掲げていた「技術論議に上下関係はなし」との考えとは裏腹に、実際は明確な上下関係が存在していたこと、その状況を打破することが技術者としての気質であることを論じた。

 その後編となる今回は、韓国サムスングループに場面を移して考えてみたい。ご存じの読者も多いと思うが、韓国は儒教思想に基づく上下関係の厳しい世界。エリートが集まってくるサムスングループでも上下関係は存在し、しかもそれは日本の比ではない。

 まず、研究開発の現場で技術論議になる場合はほとんどない。研究開発を統括するチーム長(専務や常務などの役員)の意向で、研究開発の方向性などの様々な決定が下されていく。チーム長が間違った判断をすれば、開発が失敗する可能性もある。チーム長には精度高く成功に導く戦略と考えが問われることになる。

 これに対し、部下には人事考課の評価は付いてくるが研究開発の成否に責任を負うことがない。上司からの命令を忠実に遂行することで高い評価を得ようと頑張るのみ。仮に開発テーマが失敗しても、部下にとっては自分の責任ではないという言い訳もできる。逆に言うと、部下が上司の意向とは違う方向で研究開発を進めたうえで失敗することになれば大問題となってしまう。最悪の場合、サムスンで働けなくなるため、部下の多くは上司からの指示待ち状態になる。

部下の主張を全否定

 筆者自身、2004年9月にサムスンSDIの常務として中央研究所へ着任し、当初は、リチウムイオン電池の新素材や先端技術、太陽電池、燃料電池のいわゆるエネルギー部門の戦略担当役員を務めた。以降に新素材研究部門のチーム長を務めていたが、車載用リチウムイオン電池の研究開発部門をもサポートする役割を兼務していた。

 自動車業界に通じている筆者がサポートすることで車載用リチウムイオン電池の実用化を加速させたいという当時の社長の指示だったのだが、ここで韓国での絶対的な上下関係を実感する現場に遭遇した。

 実際、業務上での関わりは少ないと考えていた欧州の自動車メーカーを訪問することになった。欧州自動車メーカーの役員や幹部クラスは、筆者がホンダ時代に出席していた国際会議で何度か顔を会わせたことがあったため、再会を祝しつつ協議できたことは筆者自身にとって良い経験だった。

 当時、車載用リチウムイオン電池の研究開発部門をチーム長として統括していたのが常務。この部門の韓国人部下たちは、常務からの高い評価を得るために、従順に指示されたことを中心に業務を進めていたのだ。たとえ部長クラスの部下であっても、そういう姿勢で業務にあたり、チーム長と議論している光景などは見たことがなかった。

 ただ、筆者自身の目にはこの常務が車載用リチウムイオン電池の開発を、自信を持って主導できる実績のある人物だとは映らなかった。ここがサムスングループにおける人事のポイントだが、必ずしも豊富なキャリアがあるからチーム長を務められるわけではない。組織改編や人事異動が頻繁に実施されるため、同じ分野でキャリアを築いていくこと自体が難しい。もちろんチーム長は研究開発の全責任を負うため、多少気の毒になるがこれがサムスン流だ。

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「技術経営――日本の強み・韓国の強み」のバックナンバー

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「部下に絶対服従を強いるサムスン」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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