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世の中には「正しい」ことより大事なことがある(んじゃない?)

2013年6月13日(木)

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 もう亡くなられてしまったが、以前、スティーヴ・マックィーンとカーク・ダグラスのフィックス声優としておなじみの宮部昭夫さんにお話をうかがったとき「いまの若い人は行間が読めなくて困る。書かれている活字通りの意味にしか、その文章の意味を解釈しない」という話をなさっていた。

 もう少し具体的に極端な例を出していうなら
 「私はあなたが嫌いです」
 というセリフがあったとして、それが話し手の性格や、そこまでのストーリーや、その場のシチュエーションによっては、相手のことを好きでいってる場合がある……というようなことだ。

 現実にはしょっちゅう起きているケースのはずだ。
 特別なことではない。

 というか、もともと熊本生まれの肥後モッコスの上に、さらに性格が何割増しか上乗せでひねくれている自分のような人間にとっては、日常会話のほとんどが上のようなレトリックで構成されているといっていい。口頭の表現と真意が一致するようなデリカシーのない人間になりたくはない。

 だが、世の中の人はもっとイノセントでピュアなのであった。
 特異な部類である自分を基準にしてしまって本当にすまない。

「たとえト書きで何も書かれていなくても、セリフの真意は、そこまでのストーリーや、(アテレコの場合は)画面の俳優の表情やふるまいでわかるはずなのに、字義通りにしか受け取れない人が多いと感じています」
 
 バックボーンがわかっていてもそうなりがちなのだから、ましてや、よく知らない人間の、文脈を無視して切り取られた短い発言だけをいきなりネットで眼にした日には、これはもう十中八九、誤読されると踏んでおいたほうがいい。
 
 書き手の顔が見えない……名前や性格どころか、ときには職業・年齢・性別すらわからないWEB上の文章は、テキストこそがすべてだ。「あの人がいっているのだから、まあこういうことだろう」などと、推しはかってはもらえない。まわりくどい修辞法は極力排して、シニフィアンとシニフィエを一致させなければ、誰も真意など読みとってくれはしない。

 と、そんなことはパソコン通信の時代から理解している。
 マンガ家がいまさら書かずとも、これまでもさんざんあちこちで議論されてきたネットの文章の重大なテーマのはずだ。

 だが、宮部さんが指摘したように、とくにWEB上でなくとも、そうしたテキスト信仰が強くなっている、と感じるのは気のせいだろうか。

 日常会話はともかく、創作や楽曲においても。

 いやしくも創作上の表現であるなら、主人公が誰かを愛してる場合「私はあなたを愛しています」というセリフを発するのは、もっとも安直な方法というか、禁じ手でさえあるはずだ。

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「世の中には「正しい」ことより大事なことがある(んじゃない?)」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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