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野菜が「時価」の居酒屋

生産者への対価を考える

2013年6月20日(木)

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 安倍晋三首相は、成長戦略の1つとして農業の活性化を掲げた。10年間で農家の所得を倍増させる目標を達成するため、農地を集約し、大規模化を進める。さらに加工やサービス業と連携して農水産物を6次産業化し、輸出を促進する策が柱になる。

 農業や漁業が儲かる産業に変わるために必要なことは何なのか。売り上げを増やすため、いかに付加価値をつけて高く売るか。あるいは効率化による経費削減などがあるだろう。だが、そこまで簡単な話ではないようだ。既に大規模化を果たしながらも、なかなか業績が好転しないケースがある。

大規模化しても利益が出ない酪農家

 北海道帯広市の大規模酪農「Jリード」は、乳牛700頭を抱えるメガファームだ。代表を務める井下英透さんはかつて、乳牛40頭で売り上げ4000万円の規模の個人経営酪農家だった。2004年、井下さんのような個人経営の酪農家4人が集まり法人化。今では700頭を抱える規模にまで拡大した。

 しかし、大規模化しても利益が思うように上がっていかない現実に井下さんは悩まされている。

 「収支はギリギリ。大規模化しても売値を自分で上げることができないから。それに円安で飼料代や燃料費が高騰し、上昇分をカバーできない」(井下さん)

 北海道の酪農家の多くは、生乳などを地域の農協に卸す。価格は年に一度、生産者を代表して農協が乳業メーカーと交渉して決める。その価格に基づいて農協への販売価格が決まる。だが、「メーカー側のバイイングパワー(購買力)が強く、燃費や飼料代が2割上がったとしても、買い取り価格は数%しか上がらない。一桁違う差額をまかなうのは厳しい」と井下さんは漏らす。

 野菜やコメで目立つ契約栽培など、農協を通さずに自分で販路を築いたり、チーズなどの乳製品に加工したりする自主流通を志す人もいる。こうすれば設定された販売価格に縛られずに済む。だが、加工品を作るには、また莫大な投資が必要になるため、多くの酪農家が自主流通には二の足を踏んでいる。

 生産や加工の段階で効率化しても、川下である出荷先への販売が頭打ちならば、利益拡大は限られる。強い農業を目指すのであれば、効率化だけでなく、いかにして強大なバイイングパワーに屈せずに販売していくかという出口戦略も必要だ。

 デフレが続き、海外から安い食材がたくさん入ってきたため、小売店での販売価格は思うように上がらない。消費者からすれば、少しでも安い方が喜ばしい。とはいえ、メーカーや小売りのバイイングパワーが増せば増すほど、生産者は弱体化してしまう。

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「野菜が「時価」の居酒屋」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長