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「成長戦略」と「骨太方針」から経済政策を考える~アベノミクスの中間評価(その4)

2013年6月26日(水)

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 私は、大学院で「経済政策論」を講じている。その際に心がけていることは、なるべく最新の経済事象を題材にすることだ。受講する院生は社会人が多く、具体的に現時点で進行中のことに強い関心を持っており、現在の政策的課題について自分なりの意見を持っていることが多いからだ。

 今回決定された成長戦略と骨太方針(正確には「経済財政運営と改革の基本方針」)は、私にとって格好の経済政策論の教材である。本稿では、教材として見た時に、経済政策論という観点から、どんな議論を導き出すことができるのかを紹介してみたい。

論点1 成長戦略とその評価の基準

 成長戦略について考えよう。そもそも今回決定された「成長戦略」は経済政策の体系の中でどう位置付けられるだろうか。単純化して言えば次のようになる。経済政策の目的は、良好な経済パフォーマンスを実現して、国民福祉を向上させることにある。その経済的パフォーマンスとしては「持続可能な範囲でのできるだけ高い成長」「働く意志を持つ人が働く場を持つという完全雇用」「インフレでもデフレでもない物価の安定」を実現することが基本である。

 こうした経済パフォーマンスを実現するには二つのアプローチを組み合わせることが必要である。一つは、短期的な視野で、需要をコントロールすることにより、成長率の変動を安定的に保つことである。要するに、景気の悪化(不況)を防ぎ、過熱を抑えるということだ。日本銀行が担っている金融政策や、不況時に公共投資を増やしたりする財政政策がこれに当たる。アベノミクスの第1の矢「大胆な金融緩和」、第2の矢「機動的な財政運営」がまさにこれである。

 もう一つは、長期的な視野で、基調的な成長力を引き上げていくことだ。第3の矢「成長戦略」はこれである。今回決定された成長戦略には「3つのアクションプラン」というセクションがあり、この中にある「雇用制度改革・人材力の強化」「科学技術イノベーションの推進」は供給面から成長力を引き上げようとする政策であり、「戦略市場創造プラン」として取り上げられている医療・介護、エネルギーなどでの需要創出策は、需要面から成長力を引き上げようとするものである。

 このように第1、第2の矢と第3の矢は、対象とする時間の次元が異なるのだから、評価の基準も異なるというのが私の考えだ。

 その一つは、マーケットの評価をどの程度重視するかだ。第1の矢、第2の矢は、短期的な効果が期待されるものだけにマーケットがこれをどう評価するかが大きなポイントになる。マーケットは短期的な効果を読み込んで行動するから、それが有効な政策であれば、それを踏まえて、株価が上昇したり、インフレ期待が高まったりすることが考えられ、それが政策効果そのものを先取りすることになる。

 しかし、第3の矢「成長戦略」については、長期的な視点での評価が求められる。政策の効果が現れるまでに時間がかかり、不確実性も大きいのだから当然のことだ。こうした長期の問題については、マーケットが適切に判断できるとは限らない。今回の成長戦略が発表された時、マーケットが失望して株価が下がったと言われている。しかし、長期の成長戦略につては、マーケットの反応は気にせずに、それが長期的な成長力を強化するかという点のみに基づいて評価されるべきであろう。

 もう一つは、継続的な実行が重要ということだ。今回の成長戦略の内容を、野田内閣の時の成長戦略(「日本再生戦略」2012年7月)と比較すると、医療・介護分野での需要創出、科学技術の振興、農業の再生、人材の育成など、似通ったものが多いことに気がつく。これはある意味で当然のことである。長期的な成長のために必要なことは既に分かっているのであり、起死回生の妙手などないからだ。またそれは望ましいことでさえある。長期的な効果を狙った政策は、継続的に推進していくことが重要だからだ。

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小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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