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急変する各国中銀の「市場との対話法」

熟考された修正なのか、意図せざる結果なのか

2013年7月1日(月)

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 中央銀行と金融市場の間の対話の必要性と重要性が注目され始めてから、筆者が記憶する限りにおいて、もう10年以上になるだろうか。その主要な舞台は米国であり、主役はグリーンスパン前議長であった。インフレ封じ込めに議長生命をかけて、有無を言わさぬ引き締め政策を敢行した前任のボルカー氏と違い、グリーンスパン氏は「巧みな話術」を通じて政策の微妙な舵取りを遂行したことで知られる。

 もっとも同氏が同時に「難解な表現」でしばしば市場を翻弄したことも事実であり、お世辞にも「円滑な双方向の対話法」であったとは言い難い。筆者も、現役ディーラー時代に同氏の言葉の意味が分からなくて隣の英国人に尋ねた際に、「俺もよく分からない」と返答されて困ったことがある。

 その後継者として2006年に米連邦準備理事会(FRB)議長に就任したバーナンキ氏は、グリーンスパン氏の手法とは対照的に「透明性」を重視した対話法を採り、政策内容やその決定の背後にある議論やプロセスなどを市場に対して丁寧に説くことを主眼に置いた。時には小さな失敗もあったが、その説明責任を重視する手法は日欧などの中央銀行にも大きな影響を与えており、市場もこれを歓迎している。結果として中銀は、自身の打ち出した政策が市場に理解されているかどうかを、その動向によって確認することが可能になったのである。

 最近の例として中銀と市場との対話が最もよく活かされたのが、2007年夏のサブプライム・ローン問題発生時であった。震源地の米国よりも一足先に動いたのは欧州である。当時欧州中央銀行(ECB)の総裁であったトリシェ氏は、欧州市場での異変に気付き、巨額の資金供給を行って市場の動揺を鎮めようとした。

 あまりに巨大に積み上がった世界的レバレッジの解消という過程で、結果的にその後の大混乱を回避することは出来なかったが、まずECBが市場の危機を読み取り、市場に流動性を与え、市場がECBの本気度を確認したというプロセスは、両者間の対話機能が活かされている証左だ、と筆者は当時実感した。

 またサブプイライム・ローン問題を過小評価して初期対応としては失態を演じたFRBのバーナンキ議長も、2008年秋には市場で値が付かなくなったモーゲージ債やエージェンシー債を大量に買い取る英断を下し、FRBが壊れかけた住宅債券市場へのフルサポートを行うという明確なメッセージを発した。

 当時日銀総裁であった白川方明氏も徹底的に流動性を供与する姿勢を示し、欧米で発生した金融危機が日本に波及することを予防した。もともと邦銀による米国証券化商品への投資額は少なかったのは事実だが、そうした油断が一気にシステミック・リスクを誘発する可能性はゼロでは無かったのである。ここでも「市場との対話」は活かされた、と言って良いだろう。

悪夢を思い出させたバーナンキ氏のサプライズ

 だが昨今のグローバルな金融市場を眺めていると、その中銀と市場とのコミュニケーションに大きな齟齬が発生しているように思われる。その最も典型的な例が、5月22日のバーナンキFRB議長による議会での「緩和縮小可能性への言及」であり、6月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の同議長の記者会見における「緩和縮小・停止へのスケジュール明示」であった。心の準備が出来ていなかった債券市場は、このサプライズに唖然とし茫然となった。

 このやり方は、少なくとも従来の「バーナンキ流対話法」とは異なるものであり、米国債市場は、まだ中銀との対話の土壌が出来ていなかったグリーンスパン時代の1994年、半年で長期金利が2%以上も上昇した「債券メルトダウン」の悪夢を思い出したのである。

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「急変する各国中銀の「市場との対話法」」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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