企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を毎月 1つテーマとして取り上げ、国内有数のビジネススクールの看板教授たちに読み解いていただき、新たなビジネス潮流を導き出してもらう。
今月のテーマは、メディアなどで盛んに報じられるようになった「ビッグデータ」──。一般的な言葉として定着しつつあるビッグデータとはどのようなものなのか。企業のビジネスを大きく変える可能性があるとされるが、実際にはどのような効用があるのか。その本質について、国内ビジネススクールの教壇に立つ4人の論客がリレー形式で登場し、持論を披露する。
今回は、神戸大学大学院経営学研究科の松井建二准教授が登場。経営科学のエキスパートとして、データに基づく仮説検証の知見を踏まえ、ビッグデータ活用のポイントを分かりやすく解説する。
(構成は峯村創一=フリーライター)
「ビッグデータ」という言葉が、ここ1~2年、ビジネスの現場で急速に広まっています。世界に蓄積されたデータ総量の90%が、過去2年間に生成されたものだとも言われており、爆発的に増加を続けているデータの洪水が、企業経営のあり方を一変させようとしているのです。
企業のビッグデータ活用には多くの成功事例がありますが、大きく分類すると次の3つのカテゴリに分けられるでしょう。
3つに大別できるビッグデータ活用方法
第1は、小売業に見られるようなマーケティングへの活用です。
小売業で最も有名な事例が、米アマゾン・ドット・コムのレコメンデーション機能。顧客の属性や行動情報を集約・分析することによって、顧客1人ひとりのニーズに合った商品を推奨するシステムです。
カルチュア・コンビニエンス・クラブが展開するTSUTAYAの「T-point」や、楽天の「楽天スーパーDB」も、同様の目的を持った活用法と言えます。
マーケティングへの活用は、ネットにとどまらず、実店舗にもその範囲を広げようとしています。富士通では、米マイクロソフトが開発したジェスチャー認識装置「Kinect(キネクト)」を使って、商品の前で消費者が行ったジェスチャーを読み取り、データを分析できるシステムを提案しています。
これは、「消費者が商品の前を通り過ぎた」「商品を見た」「商品に触った」「ほかの商品と比較した」といったジェスチャーによって、個々の消費者の商品に対する関心度を把握することができる仕組みです。
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