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「風立ちぬ」戦慄の1カット

2013年8月1日(木)

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 青写真を確認した堀越二郎が自分の机に戻り、着席後身をかがめて床のカバンから計算尺を取り出し、椅子を前に引いて作業を始める一連の動作の1カット。

 飛行シーンよりもモブシーンよりも、その作画と動画に戦慄した。

 スタジオジブリ最新作、宮崎駿監督の「風立ちぬ」は、ずばぬけた航空技術者であった堀越二郎を、ずばぬけたアニメ職人が描写するという職人映画だ。

 もはや宮崎アニメと村上春樹作品は、新作がリリースされれば、人は皆なにがしかの感想なり批評なりを述べなければいけないような雰囲気になっている。誰からいわれたわけでもないのに、おのれの見解と立場を表明しなければいけないような圧力が、少なくとも私のTLには充ち満ちる。かくして多くの人は、他人の顔色をうかがいながら恐る恐るつぶやく。

 求められてもいないのに。

 いや、批評家や評論家の人はいいのですよ。それが仕事だから。

 こう見えても私は本業でマンガ家をやっているので、他人の、とくに自分に近いジャンルの創作物の批評には慎重だ。あたりまえだ。発する言葉はすべて自分に返ってくるからだ。

 そういうことに覚悟を決めて、あるいは棚によじ登って、あるいはまったく無自覚で、気軽に辛辣な感想をつぶやいている創作者もいるけれども、あいにくなのか幸いなのか、私は覚悟も棚も無自覚も持ち合わせがないので、求められていなければ、たいていの場合スルーする。

 私が文章でなにかしら長めのことを書いているときは、だから、多くは「求められた」(=原稿を依頼された)場合だ。それも「好き」で「褒め倒したい」ときに限られている。批判したいことがあれば、それはマンガでギャグネタにすればいい。

 要するに、なにがいいたいかというと、頼まれてもいないのに(このコラムの毎回のテーマは筆者に任されている)「風立ちぬ」の感想を書くなどというのは、私にしては極めて珍しい行為だということだ。

 つまり、この作品が大好きだ、ということだ。

 宮崎アニメの中では「ルパン三世/カリオストロの城」と同じくらい「無理なく」好きといえる。90年代以降のジブリアニメの中ではいちばんかも知れない。

 いや、なんだかんだいっても、宮崎アニメは常にある一定の水準で、自分の「好き」ランクには入ってくる。しかし、毎回なにかしらのひっかかりがあったのも事実。それが今回はごく自然に自分の中にすっと進入してきたので、我ながら驚いている最中だ。

コメント11件コメント/レビュー

未見なので的外れかもしれませんが、「風立ちぬ」を評価する声を聞くとどうも旧劇場版「エヴァンゲリオン」が連想されてなりません。「作家や職人の、家人や世の大事や、ときには顧客すら省みない、いや、省みないように見えるエゴは、批判される」けれど、「創り手のあけすけなマイナス(世間的な意味で)面もそのまま作品に反映されている」「きわめて不親切な映画」。そうであるなら私は、たぶん見に行かないでしょう。◆それと、「今目の前の仕事を片づけることだけが最優先順位になってしまう」のは、現実の堀越氏のキャラクターの反映であって、技術者や職人全般の話と捉えるのはどうかと。糸川英夫が主人公ならもっと劇的になるはずです。(2013/08/02)

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「「風立ちぬ」戦慄の1カット」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

未見なので的外れかもしれませんが、「風立ちぬ」を評価する声を聞くとどうも旧劇場版「エヴァンゲリオン」が連想されてなりません。「作家や職人の、家人や世の大事や、ときには顧客すら省みない、いや、省みないように見えるエゴは、批判される」けれど、「創り手のあけすけなマイナス(世間的な意味で)面もそのまま作品に反映されている」「きわめて不親切な映画」。そうであるなら私は、たぶん見に行かないでしょう。◆それと、「今目の前の仕事を片づけることだけが最優先順位になってしまう」のは、現実の堀越氏のキャラクターの反映であって、技術者や職人全般の話と捉えるのはどうかと。糸川英夫が主人公ならもっと劇的になるはずです。(2013/08/02)

 イカプローニ先生、日本の少年(田北○生)をどこに連れてくんですか?!宮崎監督は、創作者としてもう一つ上の段階へ達したようです。それがいいことなのかどうかは、現時点では何とも言えませんが。ラストで零戦(たぶん21型)が飛び去るシーンで、不覚にも涙が止まらなくなりました!いい年したおっさんが情けない話ですが、泣かずには居られませんでした。庵野カントクの起用も、正解だったと思います。押井カントクがどう評価するか、興味があります。(西村氏の二代目波平襲名、あるかもしれません。)(2013/08/01)

となりのトトロ以来はじめて宮崎アニメを映画館に見に行き、感動して帰ってきました。すっかり「誰にでもオススメの映画」と思い込んだ自分が恥ずかしいです。でも、戦争とか戦闘機とかで最初から毛嫌いする方には、そういった眼を抜きにして、是非観て欲しいとも思います。今は賛否両論あるようですが、宮崎駿の名作として後のち評価が定まると思ってます。(2013/08/01)

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