企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を毎月1つテーマとして取り上げ、国内有数のビジネススクールの看板教授たちに読み解いていただき、新たなビジネス潮流を導き出してもらう。
8月のテーマは、日本企業が海外の企業や事業を対象に実施する「クロスボーダーM&A(合併・買収)」。グローバル競争での勝ち残りを目指す日本企業にとって、海外展開を加速する有力な手段として、その重要性は高まっている。だが、これまでの事例では「失敗」と指摘されるものも多い。クロスボーダーM&Aをうまく行って成果を引き出すためのポイントは何か。国内ビジネススクールの教壇に立つ4人の論客がリレー形式で登場し、持論を披露する。
3回目となる今回は、早稲田大学ビジネススクールの樋原伸彦准教授が登場。クロスボーダーM&Aには戦略的な位置づけと目標達成へのプロセスが必要だと同准教授は説く。
(構成は秋山基=ライター)
クロスボーダーM&Aは為替の動向に左右されると見る人がいます。確かに円高になると、海外企業を安く買える可能性が出てくるため、それが動機づけになって日本企業が海外の企業に対してM&Aを仕掛ける、ということはあり得ます。
けれども、事はそう単純に運ぶとは限りません。円高の時には、買われる側の企業が買収価格を吹っかけてくることもあるからです。実際、これまで日本企業が円高を利用して海外の企業を安く買えていたかというと、必ずしもそうではありません。
逆に円安に転じたからといって、クロスボーダーM&Aが減るかというと、そういうこともないでしょう。円安で日本の景気が良くなれば、日本企業の業績も改善されます。現在は円安局面ですが、その中で日本企業によるクロスボーダーM&Aの案件が次々に出てきているのだとしたら、それはそれで健全なことでもあります。
しかしながら過去を振り返ってみると、日本企業のクロスボーダーM&Aはあまり成功してきませんでした。世界的に見てもクロスボーダーM&Aの成功例は少ないため、日本企業だけが下手だと自虐的にとらえる必要もないのですが、日本企業による海外企業の買収がうまくいかない原因については考えておいた方がいいと思います。
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