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スーパーカミオカンデがアートになった

ドイツの現代美術家、グルスキーを知っていますか?

2013年8月19日(月)

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 「絵みたいだね」

 のっけから素朴すぎる言葉で恐縮だ。今年10歳になった小学生の男の子が「アンドレアス・グルスキー展」(東京・六本木の国立新美術館で開催中)という展覧会のカタログを「これなーに?」と眺め始めて、ごく自然に口をついて出てきた一言である。

アンドレアス・グルスキー「カミオカンデ」(2007年、タイプCプリント、228.2×367.2×6.2cm (c)ANDREAS GURSKY /JASPAR, 2013 Courtesy SPRUTH MAGERS BERLIN LONDON)

 アンドレアス・グルスキーは1955年生まれのドイツの現代美術家。気鋭の作家として知られ、2011年11月のクリスティーズの美術品オークションでは、「ライン川 II」という作品が約430万ドル(現在の為替レートで約4億2000万円)で落札されるなど美術マーケットでの評価も高い。

「絵みたい」ということは「絵ではない」ということ

 さて、この一言、子供の言葉ながら深読みができる。「絵みたい」という表現は、「絵ではない」ことを物語る。そう、グルスキーの作品は絵ではなく写真なのである。そして、絵という媒体に写真とは違った表現力あるいは伝達力があることを、その男の子は知っている。

 美術はずいぶん見てきたつもりだが、実を言うと、10歳の素直な感性に、少々はっとさせられた。グルスキーの作品を大人の目で見ると、まず「写真だな」と思ってしまう。それだけで、固定観念にとらわれてしまったなと反省せざるを得なかったのだ。

 写真は言うまでもなく実際に目に見えている光景を機械が捉えて印画紙などの媒体に焼き付けたものである。一方、絵は、見えている光景の束縛からは解き放たれ、表現は自由だ。見たままを忠実に描くことを心がけた写生もあれば、現実の風景が跡形もないほどに変容して生まれた抽象画もある。記録のためなど同じ目的を志向することはあるが、写真と絵は根本的にあり方が異なるのだ。

 グルスキーの絵画性については、専門家たちの間ですでに言及がある。今展のカタログにも、国立新美術館主任研究員の長屋光枝氏が執筆した論考が掲載されている。だが、男の子はそんなことを全く知らずに、写真が掲載されたページだけを眺めていた。子供の感性、恐るべし。専門家が見据えた領域に、ごく自然に踏み込んでいたのだから。

 ここで、グルスキーの「絵みたい」な写真を見てみよう。おびただしい量の半球状の物体が湾曲した壁面を埋めた1枚。横幅が3.6メートルもある大作だ。画面が金色に輝いている。確かに絵のようにも、あるいはCGのようにも見える。一方で、見覚えがあるという方もいるはずだ。被写体は、岐阜県飛騨市の宇宙素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」である。

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「スーパーカミオカンデがアートになった」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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