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サムスン移籍の理想と現実

生き残るには覚悟が必要だ

2013年8月22日(木)

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 パナソニックやソニー、シャープ、NEC――。「リストラ」の名の下、日本の名だたるエレクトロニクス関連企業から多くの技術者が退社を余儀なくされている。日経ビジネスの5月20日号の特集「パナソニック シャープを辞めた人たち」では両社から別の日本企業に転職したり、自ら起業したりしている技術者の奮闘する姿が紹介されている。

 一方で、日本企業から数多くの技術者が東アジアの企業、とりわけ韓国サムスングループに移籍しているのも事実だ。日経ビジネスオンラインの6月5日掲載記事「サムスンに多くの転職者を出した日本メーカーは?」によると、特許出願の分析の結果、パナソニックが最多という。以降、NEC、東芝、日立と続くとある。

 プロ野球の世界では日本を飛び出し米国のメジャーリーグへ、サッカー界では日本から欧州へそれぞれ移籍し活躍する選手に対して、賛辞や応援のメッセージは多い。企業人や学者でも、日本を離れて欧米に移籍している人たちは少なくない。

 筆者は青色発光ダイオードの発明者である元・日亜化学工業の中村修二氏と二度ほど直接会話をした経験があるが、同氏は会社を去る際に国内からのオファーはなかったと話していた。結局、国内での再就職先を見つけられず渡米して大学教授に転じた。ノーベル賞受賞者である根岸英一博士や利根川進博士も、日本の研究環境に不満を持って渡米し大きな成果を生み出した。

 一方で日本の技術者が韓国や中国へ移籍すると応援メッセージどころか、「日本を捨てた」、「裏切り者」、「技術・人材流出」など、数多くの批判が上がる。日本では終身雇用の概念が根付いてきた強烈な文化があり、弊害として人材が流動しない傾向が強い。世界的に見ても、このような国は日本以外には見当たらない。

 国内企業では、業績や競争力が低下し事業撤退や事業縮小の波が押し寄せると、決まってリストラの嵐が吹き荒れる。とはいえ、企業が最後まで面倒を見て就職先を斡旋してくれることはなく、リストラ対象者が自らのルートと実力で次の行き先を探さなければならないのが実態だ。

 日本国内でも、次の受け皿があって移籍を自然に行える文化やスカウトなどで移籍できるシステムなどが最近では少しずつ増えてきたものの、移籍によって待遇面の条件が上がるケースは少ない。多くは据え置かれるか逆に悪くなってしまう。だからこそ海外へ飛び出すことが多くなるわけで、国内に受け皿があるならば海外へ脱出する人材は少なくなるはずだ。

 筆者自身、ホンダの研究開発戦略と筆者の考え方が完全に食い違ったため、2004年にサムスングループのサムスンSDIに移籍したことは前回の本コラムで紹介した。実際に在籍した人間から見ても、これら日本企業出身の技術者は多かったと思う。

 ただ、サムスングループへ移籍する日本人技術者にもさまざまなタイプがいる。業種もさまざま。同業種からの移籍だけではない。性格も悩み考え抜いて移籍する者、逆にあまり熟考せずに移籍する者、韓国企業文化を積極的に理解して溶け込もうとする者、逆に日本企業の文化を押し付けようとする者などがいる。結果として在籍期間も異なり、1年以内に退社してしまう者も少なくない。

 とはいえ、日本企業からサムスンに移籍した人間が、その経緯を語ることはほとんどない。今回は、その一端を紹介したい。

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「技術経営――日本の強み・韓国の強み」のバックナンバー

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「サムスン移籍の理想と現実」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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