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「はだしのゲン」を巡る「図書館戦争」に思う

2013年9月5日(木)

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 8月半ば、漫画家・中沢啓治氏(故人)の代表作『はだしのゲン』が、昨年末から松江市立小中学校の図書館で「閉架」(オープンな書棚に並べず、自由に閲覧できない)の状態にあることが一斉に報じられた。市の教育委員会が閲覧制限を求めたのに応えた措置とのことだ。

 学校附設のものながら、公共の図書館が外圧によって蔵書の扱いを変えた。こうした「事件」が起こるたびに、「図書館」というものの機能と役割について考えさせられる。

 図書館はあらゆる外圧からの独立を守られるべきである。これが、記者の立場だ。今回の事件を、日本社会の右傾化を象徴する出来事として捉える向きが多い。だが、今回の圧力が、たまたま、どちらかと言えば政治的に「右」に位置する立場からのものだっただけだ。公共図書館は、政治的な立場の左右にかかわらず、常にこうした外圧にさらされて来た。

 例えば、2001年、政治的にはまるで「逆」の事件が起こっている。千葉県船橋市西図書館において、司書資格を持った職員が、個人的な政治理念に基づいて「新しい歴史教科書をつくる会」会員らの著作を廃棄処分にしてしまったというものだ。関係者は処分され、蔵書は復元された。職員による行為ではあるが、こちらは、どちらかと言えば(内部職員によるものだが)「左」からの力によるものだった。

 「はだしのゲン」の閉架を求めた立場に対しても、「新しい歴史教科書をつくる会」関係者の著作を廃棄した立場についても、ここでは同意も不同意もしない。それぞれの著作に、(ある政治的な立場から見たら)どんな「史実」の誤謬があるのかについても議論するつもりはない。

 理由は簡単だ。内容いかんに関わらず、図書館の蔵書収集の自由は守られるべきと考えるからだ。

「内容いかんに関わらず」に例外はない

 内容いかんに関わらず、と書いたのは「政治的」な意味だけではない。2008年、大阪府堺市立図書館では、男性同士の恋愛をテーマにしたいわゆる「BL(ボーイズラブ)小説」について、これを図書館に置いておくべきか廃棄すべきかという議論が起こった。廃棄派は過激な性描写を含むBL小説を「有害図書」であるとして排除を求め、ジェンダー論の立場からは性的マイノリティを排除することの危険性が訴えられた。この騒動に対する記者の立場も同じだ。有害か無害か、性的マイノリティの権利が守られるべきかどうかという議論に個人的な意見はあるが、それとは一切かかわらず、司書が収集した図書はあらゆる圧力から守られるべきである。

 そうは言っても、有害愚劣な図書というものはあるだろう、という反論があろうかと思う。例えば1996年、ある団体が、静岡市立図書館に対して、所蔵する『タイ買春読本』という書籍を廃棄するよう要請を出して議論を呼んだ。海外での買春を指南するような内容ゆえ、倫理的、社会通念的に公序良俗に反するかどうかで言えば「反する」のは確かだろう。だが、たとえこうした内容の書籍だったとしても、図書館がひとたび収集した図書であれば守られるべきだという意見は変わらない。

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「「はだしのゲン」を巡る「図書館戦争」に思う」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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