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金融危機の教訓は生かされたか

リーマンショックから5年、「金融のいま」

2013年9月3日(火)

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 猛暑はそろそろピークを越えたようだが、国際資本市場は今月の米国FOMCにおける量的緩和縮小の可能性、米連邦準備理事会(FRB)次期議長の指名人事、あるいは新興国の経済失速や通貨下落、そしてシリア情勢など、まだ数多くの不透明な材料に囲まれて、寝苦しい日々が続いている。

 特に新興国通貨問題は5月中旬のFRB議長発言から突如として浮上したものであり、消化不良の感は否めない。危機と言うほどの段階ではないにせよ、今後の米国長期金利次第ではかなり厳しい状況に追い込まれる国が出てくる可能性はある。

 ただし金融システムという点に関しては、米国をはじめとしてかなり落ち着いてきたように見える。特に大手米銀が発表した直近の決算は好調であり、住宅市況が急回復していることもあって、業績の安定化が期待されている。企業の資金需要は相変わらず低調だが、貸倒引当金の積み立ては一巡し、投資銀行部門の取り引きも徐々にではあるが改善している。

豹変し始めた大手金融の低姿勢

 思い起こせば2007年の8月、やや唐突に欧州中銀が大量の資金供給を発表し、サブプライム・ローン問題が急浮上してから1年後の2008年9月にはリーマン・ブラザーズが破綻した。あれから5年が経過、その間に巨額の公的資金に支えられて大手銀行や保険会社、自動車メーカーなどが救済され、大胆な金融緩和のもとで不動産価格や株価は反転し、いまや米国は世界経済の中で最も安定的な成長国として復活を遂げている。

 ただし、その景気回復が過去の景気循環における姿とかなり異なっていることは事実だ。特に雇用環境に関しては、失業率の低下ほどには改善していないとの見方が大勢である。長期的失業が解消されない構造は、深刻な社会問題として定着し始めている。そんな中で一部市場でバブルの兆候が見られ始めたことに対し「果たして金融危機の教訓は活かされているのか」いう疑念が生まれてきたのは不思議ではない。

 2008年当時は金融規制強化に反対する声はほとんど無く、大手金融の経営者すらその方向性に賛同する殊勝な姿勢を見せていた。だが徐々に経済が回復して自身の利益性が向上するにつれ、その低姿勢が豹変し始めている。

 近年、大手銀行の経営者らがドッド・フランク法の制定やボルカー・ルールなど金融規制強化への動きに対して、精力的にロビイングを重ねてブレーキを掛け始めたことは周知の通りだ。今さらながら「政府の支援など必要なかった」と嘯く経営者もいる。

 これに呼応するように、保守派の経済学者らも規制強化で金融業が縮小すれば米国の国益を損なうことになる、として銀行経営者に同調する姿勢を強めている。金融政策評価とともに金融規制に関しても、専門家の間では両極端の考え方が存在している。それは、まるで日本の消費税増税を巡る議論と同じく、現代版の宗教戦争のようにも感じられる。

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「金融危機の教訓は生かされたか」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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