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値上げの秋、消費主導の景気回復に試練

日銀も長期視点の“微修正”で布石?

2013年9月5日(木)

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 例年、国際金融市場で夏の終わりの風物詩と言えば、米カンザスシティー連銀が主催し米ワイオミング州のジャクソンホールで開く経済シンポジウムだ。各国中央銀行の当局者が集まる会合とあって、出席する要人の発言内容に対しては、世界の市場関係者から注目が集まる。

 しかしながら、今年(8月22~24日開催)は米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長に加え、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁とイングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁も欠席し、ほかの参加者の発言が材料視されることもなく終了した。

 市場は足元でのシリア情勢の緊迫化を見極め、9月17~18日に開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、米量的緩和第3弾(QE3)縮小開始の可否を判断するため、物価情勢と雇用動向の点検を進める状況にある。

初参加の黒田総裁が“唐突な発言”

 それでも、この「ジャクソンホール会合」に今回、日銀総裁として初めて参加した黒田東彦総裁が8月24日に講演した内容は、日本国内で話題になった。

 題目は「日本の非伝統的金融政策と国際金融システム安定に向けた取り組み」。日本語で6ページそこそこの原稿の量は決して多くはない。しかし、そこでは、金融緩和効果を生じさせるためには、①実質金利の引き下げ、②自然利子率の上昇、の2つの側面があると説明した。

 このうち①は「異次元緩和」決定後、日銀による大量の国債買い入れとインフレ期待に働きかけ、実質金利の低下を促す意図を繰り返し説明してきたものだ。

 ところが、②については、突然出てきた印象で、市場に目新しい印象を与えてもおかしくないものだった。従来の日銀であれば、「経済理論的には、自然利子率(均衡金利、もしくは潜在成長率はほぼ同意義)は金融政策では動かすことはできない」との考え方であったはずだ。

政策的帰結に自然利子率の上昇を語る

 講演文によれば、「たぶんに見解が分かれるところが多い」と前置きしつつ、「そもそも自然利子率とは、企業が実物投資を行うことで得られる予想リターンに相当」「政策的帰結として、日本の潜在成長力が回復すれば、投資機会が増え、自然利子率の上昇という形になって現れてくる」と説明した。

 その根底にある、日本の低成長の大きな原因は「定着したデフレマインドにある」「デフレマインドを払拭できれば経済にはプラスに働く」「日本の潜在成長率の上昇も可能である」との考え方だと思われる。

 そして潜在成長力の強化に資する、具体的な日銀の施策は貸出支援基金による資金供給だという。大量の国債買い入れに隠れて、見落とされがちな貸出支援基金というツールの宣伝も兼ねているように感じられる。また補足として、「自然利子率を高く維持することは、様々なショックに対する経済耐性を高めるという点でも重要」と指摘した。

 この発言をきっかけに、今後この2つの側面の政策効果を語ることになるかは今のところ不明だ。しかし、いずれにせよ、始まって5カ月が経つ異次元緩和は、従来とは異なる働きかけを続けていくのかもしれない。日銀にとって2年で2%の物価安定目標はチャレンジングだが、期待に働きかける政策(量的・質的緩和=QQE)の滑り出しは悪くないことは確かだ。だが、長い目で見た場合、将来、期待に働きかけるだけでは効果が乏しくなった時、今回のジャクソンホールでの黒田総裁の発言が「政策微修正の布石」と受け止められる日がくるかもしれない。

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「値上げの秋、消費主導の景気回復に試練」の著者

岩下 真理

岩下 真理(いわした・まり)

SMBCフレンド証券エコノミスト

市場部門での長年のエコノミスト経験を生かす数少ない女性「日銀ウォッチャー」。わかりやすく楽しい解説がモットー。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会幹事を務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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