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中国は「しがみついてでも残るべき市場」です

チャイナリスク再考(第4回)

2013年9月12日(木)

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 企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を毎月1つテーマとして取り上げ、国内有数のビジネススクールの看板教授たちに読み解いていただき、新たなビジネス潮流を導き出してもらう。

 9月のテーマは、日本企業が直面する「チャイナリスク」。2012年9月11日に日本政府が尖閣諸島を国有化してから1年。中国国民の間でくすぶり続ける反日感情は、現地に進出している日本企業の事業活動にどのような影響を及ぼしているのか。また、賃金の高騰などによって、「世界の工場」としての中国の位置づけは変わりつつあると言われるが、実態はどうなのか。国内ビジネススクールの教壇に立つ4人の論客がリレー形式で登場し、持論を披露する。

 今回も、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の菅野寛氏に登場していただく。「巨大成長市場」として中国が抱えるリスクを読み解いたうえで、規模、成長性を考慮すれば、日本企業にとっては依然、可能性の大きな有望な市場であると説く。

(構成は小林佳代=エディター/ライター)

 前回に説明したように、チャイナリスクには「世界の工場」として中国が抱えるリスクと「巨大成長市場」としての中国が抱えるリスクの2つがあります。今回は、巨大成長市場としての中国が抱えるリスクについて考察します。

 中国市場のリスクとして第1に挙げられるのは「経済成長鈍化」、第2が「成長に伴うひずみ」、第3が「政治リスク」、第4が「反日リスク」です。

 第1~第3までのリスクは、日本企業に限るものではなく、すべての国の企業に共通するリスクです。尖閣諸島国有化をきっかけに勃発した激しい反日デモの影響で、第4の反日リスクが、エモーショナル、センセーショナルに誇張され、多くの人が過大に見る傾向にありますが、本質的には第1~第3のリスクの方が大きいと言えます。

 チャイナリスクを判断するには、これら4つのリスクを冷静に分析していくことが必要です。

 第1の経済成長鈍化リスク。高度成長を遂げていた中国経済がスローダウンし、今年から来年にかけて、何らかの「調整」局面が起きる可能性があります。バブルがはじけるようにハードランディングするのか、ゆっくり安定成長に移行するソフトランディングできるのかは、中国政府のさじ加減次第。経済合理的に予測するのは難しい。ここにリスクがあると考えられています。

 中国経済の成長は10年前に比べ、確かにスローダウンはしています。けれど、今も7%台の成長を続けている。欧米、日本は3%未満ですから、それに比べれば信じられない高成長です。インド、ブラジルなどほかの新興国に比べても成長性の上で何らそん色はありません。世界第2位の経済大国と規模も大きいうえに、まだまだ非常に魅力的な市場。手を引くことはあり得ず、むしろ投資してリターンを取りに行くべきだと私は思います。

 第2のリスクが成長に伴うひずみ。その典型例が大気汚染などの公害問題です。水、食品などの安心・安全にかかわるリスクも懸念が高まっており、北京市に駐在していた外国人ビジネスマンと家族は、半分以上が帰国したと言われています。

 しかし、こうしたひずみは、過去、経済成長に伴って、あらゆる国で起きてきたことです。日本でも1950年代半ばから70年代半ばの高度経済成長時代には、水俣病、四日市ぜんそくなど公害の問題が生じました。産業革命の時の英国、米国も同様です。当たり前の、いつか通る道を中国もたどっているということです。

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「中国は「しがみついてでも残るべき市場」です」の著者

菅野 寛

菅野 寛(かんの・ひろし)

一橋大学大学院教授

東京工業大学工学部卒業、同大学院修士課程修了。米カーネギー・メロン大学経営工学修士。日建設計、ボストン・コンサルティング・グループを経て2008年から現職。2012年から研究科長を兼務。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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