「シェリル」を支える男

米サーベイモンキーでCEO(最高経営責任者)を務めるデビッド・ゴールドバーグ氏(撮影:村田和聡、以下同じ)

 約2年前、まだ上場前の米フェイスブック本社を取材で訪れた。フェイスブックの社内は至る所でエンジニアがリラックスして作業する自由闊達な雰囲気が流れていた。同社創業者でCEO(最高経営責任者)のマーク・ザッカーバーグ氏もふらりと社員と談笑しながら歩いており、いわゆるエンジニア集団として典型的なシリコンバレー企業だった。

 だからかもしれない。COO(最高執行責任者)であるシェリル・サンドバーグ氏の取材で執務スペースに近づいた時、ほかのエリアとは明らかに違う緊張した空気が周囲に流れているのを肌で感じた。雰囲気に飲まれ、否応なしに緊張度が増したのを覚えている。

 だが、その緊張を打ち破ってくれたのは当の本人であるサンドバーグ氏だった。彼女は「私は東海岸出身だから話すのが早いの。できる限りゆっくり話すように心がけるわね」と、柔和な笑顔で気遣ってくれた。聡明でありながら、気遣いも決して忘れないサンドバーグ氏の第一印象は極めてソフトだった。

 その時のエピソードを話すと、「ソフトな印象を受けた?本当か?」と笑いながら否定してきた男がいる。その人物こそ、サンドバーグ氏の夫である、デビッド・ゴールドバーグ氏だ。彼は現在、オンラインアンケート作成ツールを提供する米サーベイモンキーのCEO(最高経営責任者)をしている。

 サーベイモンキーは1999年にライアン・フィンリー氏によって立ち上げられた。比較的歴史の古いインターネット企業と言える。同社にとって転機が訪れたのは2009年だ。プライベートエクイティコンソーシアムが同社を買収。ゴールドバーグ氏がCEOに就任した。それからの同社の急成長ぶりは著しい。当時14人の社員しかいなかったサーベイモンキーは今では270人の社員を抱えるまでに成長し、オフィスも世界6カ国に構えて16カ国語に対応。海外展開を急速に進めている。

 世界中での利用者数は1500万人に上り、日本での利用者数も6万8000人を超えた。企業向けサービスも行いながら、一切の営業部隊を持たない点もユニークだ。同社が公開した資料によれば、2012年の売上高は1億1300万ドル(日本円で約113億円)に達している。

 ゴールドバーグ氏の卓越した経営手腕によってサーベイモンキーは今もなお成長を続けている。だが、業績はさておき、サーベイモンキーには面白い特徴がある。急成長を支える社員全体の4割が女性という事実だ。女性にとってきわめて働きやすい職場環境が作られているのには理由がある。CEOのゴールドバーグ氏自身が自他ともに認める「イクメン」なのだ。

 「子供が生まれてからライフスタイルが変わったんだ」と、ゴールドバーグ氏は言う。結婚するまでは相当なハードワーカーだった彼は、子供の誕生とともに、それまでの生活を大きく改めた。第一子が生まれたとき、彼はヤフーで働き、妻のサンドバーグ氏はグーグルで副社長の職にあった。ゴールドバーグ氏の勤務地は米ロサンゼルスで、サンフランシスコから600キロ以上離れている。互いに忙しい生活を送る中、協力して子供を育てるにしても通勤は現実的ではなかった。彼はヤフーを辞めた。

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原 隆

原 隆

日経コンピュータ記者

宮崎県出身。お酒が好きです。

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