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セレンディピティで成功のジレンマから脱出しよう

  • 長谷川 喜一郎

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2013年10月8日(火)

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 ここまで成功してしまった日本では、経営幹部となるための資質要件は、積極姿勢にみせかけた保守であることになっていると思う。換言するならば、リスクをとらないことを至上命題とすることに埋没しているのである。中堅幹部は、組織内の手続きをよく考えて保身的に行動する。大企業は、コンプライアンスと権限委譲ゲームに熱心だ。中堅企業でも、業績の安定しているところは、大企業と似てきている。

 このままではわれわれは、過去の成功の奴隷になってしまう。時代の産物であるこの風潮は、得体のしれない怪物に等しい。怪物と戦うことは難しい。それならこの怪物に罠を仕掛けようと思う。セレンディピティという罠だ。

 フレミングのペニシリンの発見は雑菌の青カビが誤りから培養器に入ったという偶然との遭遇として有名な話である。偶然がどんな役割を果たしたかという物語はわれわれの周囲には沢山ある。偶然については、様々な分析が行われているが、偶然に積極的に取り組む試みを紹介したい。それはセレンディピティという言葉から始まる物語である。

セレンディピティとは何か

 セレンディピティという言葉は1754年にホレス・ウォルポールによって世の中に紹介された。セレンディップという王国の王子たちの寓話を「偶然と察知力」の物語として造語にしたこの人物の功績は大きい。その後、多くの学者が、セレンディピティという言葉を核として、研究成果を残している。中でも私の心に強く残ったのは澤泉重一氏の著書で、実務者にとって貴重な導きである。

 セレンディピティは「才能」の一種という表現でオックスフォード英語辞典にも紹介されたが、偶然とか幸運というイメージは、相変わらず実務者にとってはなじめないものである。日本の未来を切り開く道具として私はここで自分の昔の体験と現在の仕事を通じてセレンディピティを紹介したいと考えた。

 コネティカット州のイノテックは40年近く前からセレンディピティを活用した手法で、新製品開発、新コンセプト開発に取り組んでいた。同社の手法は行動心理学とセレンディピティを組み合わせたのである。イノテックとの出合いによって、私は、偶然とは「迎えに行く」こともできるものであり、偶然は「飼いならすこと」もできるものであると知った。

 物語は30年前のイノテックの会議室からはじまる。

 ピッツバーグのコパーズはデュポンから高速道路用の白線ペイント基材を大量に買っていたが、材料の二酸化チタンが高価なので、代替品の開発を要求していた。この開発を引き受けたがイノテック社であった。私はオブザーバーとしてたまたまこの会議に参加していた。ここにその時の体験を紹介しよう。

 世間でいうブレーンストーミングだと思って会議に座ったのだが、途中で、私は体験した事の無い不可思議な討論の進め方に魅了された。

コメント1

「セレンディピティとイノベーション」のバックナンバー

  • 2013年10月8日

    セレンディピティで成功のジレンマから脱出しよう

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