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「みずほ暴力団融資問題」の底知れぬ闇

万全でなかった“反社対策”

2013年10月8日(火)

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 あまり見たことがないITシステムのデモを見たのは、春先のことだった。

 システムを操作するのは、金融向けシステムを得意とする某IT企業の幹部。手元のパソコンに立ち上げたシステムの画面に、誰でも知っている、ある有名暴力団の組長の名前を打ち込んだ。すぐに画面上にアラートが上がる。名前や所属組織の情報だけでなく、出生地や出生年なども同時に表示された。

 「ほら、チェックできました。実はこの名前は、暴力団がよく使う『渡世名』という通称なので、今度はこの方の本名を打ち込んでみましょうか」。そこでこの組長の本名を打ち込むと、やはりアラートが上がった。渡世名で検索した先ほどと同じ情報が表示され、同一人物であることがすぐに分かる。「渡世名でも本名でも、『●●組▲代目組長』などと打ち込んでも、すべて同一人物として識別し、反社会的勢力かどうか即座に判別できます」。その幹部は、誇らしげに説明していた。

 これは、同IT企業が開発した金融機関向けのソフト。銀行などが顧客の素性をチェックするためのフィルタリングシステムだ。顧客名を入力すると、テロリストや暴力団など、反社会的勢力の複数データベース(DB)を瞬時にチェックし、取引しても問題がないかどうかを判断するために使う。反社会的勢力のDBであるブラックリストは、国内外の当局や業界団体から提供されていたり、銀行独自に作成していたりする。これらを複数組み合わせて、口座開設に訪れた顧客の情報と突き合わせ、取引の可否を判断する。

 同社が開発した、このフィルタリングソフトでは、名前や組織名の表記が完全に一致していなくても、同じではないかと思われるものも特定して表示する検索技術などが特徴だという。例えば日本語の漢字なら、新旧の漢字表記の揺れも含めてチェックできる。同一人物の可能性が高ければ、「渡辺」と「渡邊」、「斉藤」と「斎藤」なども考慮して検索する。カタカナでも、「ボイス」と「ヴォイス」など、発音が似て表記の違うものでも、同一の人物である可能性があると判断すれば検索結果に表示する。

 組織名の場合も同様。いわゆる「前株」か「後株」か、漢字表記かカタカナ表記、もしくはアルファベット表記かなど、いずれの表記の揺れも考慮し、同一性が疑われるものはピックアップしてくる。外国人の場合は、姓名を逆の順に打ち込んだり、ミドルネームが入っていたり入っていなかったりする場合などのあいまい検索にも対応する。銀行の窓口担当は、新規口座開設の申し込みがあると、事務処理で申込者を待たせている間に、手元の端末でこのような検索をして、素性をチェックしているようだ。

 同ソフトは国内金融機関に広く導入されているという。金融機関の反社会的勢力の対策は、かなり厳格に実施されているのだと、このデモを見ながら納得した記憶がある。それだけに、9月末、みずほ銀行の暴力団融資問題が発覚した際は少なからず驚いた。

 提携する信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)を通じ、暴力団へ2億円程度を融資していることを知りながら2年以上、抜本的な対策を取らずにいたとして、みずほ銀行は金融庁から業務改善命令を受けた。

 一部報道では、警察幹部の「反社会的勢力を放置するとは、今時考えられない」というコメントが紹介されていた。改正犯罪収益移転防止法の全面施行や、各都道府県の暴力団排除条例の施行もあり、金融機関は反社会的勢力との取引排除を進めてきたはず。

 実際、金融機関向けのコンサルタントや、大手行のマネーロンダリング(資金洗浄)対策などを取材し、日本の銀行における反社会的勢力対策の実状を知れば知るほど、みずほ銀の暴力団融資問題の闇が浮かび上がってくる。

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「「みずほ暴力団融資問題」の底知れぬ闇」の著者

宗像 誠之

宗像 誠之(むなかた・せいじ)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション、日本経済新聞社産業部、日経コンピュータを経て、2013年1月から日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト