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ノーベル経済学賞、「弟子」が明かすハンセン教授の知られざる横顔

「合理的期待仮説」の限界を提示し、克服

2013年10月17日(木)

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 2013年のノーベル経済学賞は、ラース・ピーター・ハンセン米シカゴ大学教授とユージン・ファーマ米シカゴ大学教授、ロバート・シラー米エール大学教授の3人に、彼らの資産価格に関する実証研究に対して授与された。筆者はシカゴ大学でハンセン教授に直接師事したので、ハンセン教授の学術的貢献とその社会的意義についてだけでなく、人柄についても具体的なエピソードを交えて本稿でご紹介したい。

 資産価格を研究する経済学の主な分野はファイナンスとマクロ経済学である。その実証分析に用いられる手法のうち、ひとつの重要な部分が計量経済学の分野に属している。ハンセン教授は主にマクロ経済学の視点から、計量経済学などさまざまな手法を開発しながら応用して、資産価格を実証的に研究した。ハンセン教授の学術的貢献は、資産価格の研究だけではなくファイナンス、マクロ経済学、計量経済学のさまざまな分野に広く及んでおり、多くの研究分野に大きな影響を与えてきたが、本稿では特に資産価格の実証分析に関する部分に焦点を当てる。

密接な関係を持つマクロ経済と資産価格

 ハンセン教授の業績は、大きく言って2つある。1つは教授がまだ大学院生のころから携わってきた、投資家の予測に関わる合理的期待モデルの実証分析に関する貢献である。もう1つは、合理的期待モデルと整合的ではない多くの証拠が得られたことを踏まえ、合理的期待を超えた「行動経済学」の方向性を備えた、「経済を描写する真のモデルが分からない」という「モデル不確実性」のもとでの予測を、モデル化したことである。

 資産価格の研究で重要な点は、資産市場だけではなく、さまざまな市場での人々の予測が価格決定に影響することである。例えば近い将来、経済全体に金融財政政策の変化や新技術の発達による好況が予想され、企業の利益が増加すると投資家たちが予測するとしよう。すると、その予測によって企業の株式価格は上昇する。このようにマクロ経済と資産価格は予測を通じて密接な関係を持っている。

 しかし1960年代の主流派マクロ経済学では、人々の予測について、予測に使う変数の過去と現在の値だけから予測が形成される、という恣意的な仮定が用いられてきた。そのため、この予測を通じたマクロ経済と資産価格の関係を分析することは、ほぼ不可能であった。そして70年代初頭に「合理的期待革命」と呼ばれる大きな変革がマクロ経済学で起こった。

「合理的期待革命」初期の実証分析と理論研究

 合理的期待モデルでは、「人々の予測がモデルと整合的である」という仮定と、「予測が人々にとって入手可能な情報の、条件付き期待値に等しい」という仮定が置かれる。ファイナンスの分野では、今回同時に受賞したユージン・ファーマ教授が、後者の仮定を中心に置いた「効率市場仮説」を提唱して、重要な実証分析を発表していた。マクロ経済学の分野では、ロバート・ルーカス教授(1995年にノーベル経済学賞を受賞)、トマス・サージェント教授(2011年にノーベル経済学賞を受賞)らが、前者の仮定と後者の仮定の両方を置いた理論モデルの構築に大きな貢献を始めていた。

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「ノーベル経済学賞、「弟子」が明かすハンセン教授の知られざる横顔」の著者

大垣 昌夫

大垣 昌夫(おおがき・まさお)

慶応義塾大学経済学部教授

1982年、大阪大学経済学部卒業。88年、米シカゴ大学経済学部博士課程修了(Ph.D)。米ロチェスター大学助教授、米オハイオ州立大学教授などを経て、2009年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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