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町人の心を持ったサムライ小倉昌男

官との対決の背景にあった自己責任経営への覚悟

2013年10月21日(月)

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 筆者が住む町の図書館の蔵書データベースで、『小倉昌男 経営学』(日経BP社)を検索したら貸し出し中になっていた。さらに7人が予約しており、いまだにかなりの人気である。8年あまり前に逝去したのだが、小倉昌男に対する一般の関心は依然として大きいといえるだろう。

 今や社会的インフラとなっている「宅急便」を生み出し、規制改革の旗手として監督官庁と対決して一歩も退かなかった点など、数々の伝説を残した。アベノミクスで成長戦略が注目される昨今、小倉の為したことは大いに参考になるはずである。絶大なリーダーシップは時に直情径行に見えたが、そう単純に割り切れないのが人間の面白さである。

「たまには濁酒も呑んでください」

 ヤマト運輸(現ヤマトホールディングス)の後任の社長を務めた都築幹彦が今年4月に『どん底から生まれた宅急便』(日本経済新聞出版社)を出版した。その中に書いている小倉の横顔が興味深い。路線トラック部門の営業部長として、営業課長の都築の上司になった小倉について、「初めのうちは、気難しい人だなあと感じていた」という。

 1984年、小倉の還暦を祝う会の名称をどうするか、幹事同士で相談した時、「小倉昌男さんの清濁併せ呑む会」で意見が一致した。「会名には、『清い酒ばかりでなく、たまには濁酒も呑んでください』という意味が込められていた」そうだ。なるほど筋道の立たないことは大嫌いという小倉の一面を逆説的に表している。

 「あきんどと屏風は曲がらねば世に立たず」という言葉がある。屏風は屈曲させずに真っすぐに開いたら倒れてしまう。それと同じように、商売人も客にうまく取り入るには自分の気持ちや意見を曲げなければならないという意味だ。小倉の言動は、それとは対極に見えた。

 「二本差しが怖くて田楽が食えるか」とよく言っていた。江戸の町人が大小二刀を腰に差したサムライにタンカを切る時の台詞である。串に刺した田楽を平気で食うようにサムライなんぞは怖くないというわけである。民間企業に身を置く「町人」たる自分は、官僚がいくら「お役人様」として振る舞っても恐れないと公言し、実際にその通り行動していたのはよく知られている。

「社員はみんな戦友だと思って平等に接しましたよ」

 仕事に厳しいと定評のあった小倉だったが、普段は社員にかみしもを脱いで接していた。父の小倉康臣が創業した大和運輸(82年ヤマト運輸に変更)に1948年に入社し、肺結核による5年近くの休職を経て54年に、子会社の静岡運輸に29歳で総務部長として出向した。55年入社の浅沼肇は静岡運輸の浜松支店に出向した時、若き小倉と出会った。

 一週間ばかり静岡市の静岡運輸本社で研修を受けることになった浅沼は、小倉から「おれの下宿に泊れよ」と気さくに声をかけてもらった。「ではご厄介になります」と転がり込んだ蒲原の家は、後に小倉と結婚する玲子の実家だった。

 「婚約中で下宿していたのでしょう。それから一週間、小倉さんと一緒に生活しました。ヤマト広といえども、同じカヤで寝たのは私くらいのものでしょう。会社にいったん入ると厳しいですが、個人的には面倒見がよい方でした」と浅沼は振り返る。

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「町人の心を持ったサムライ小倉昌男」の著者

森 一夫

森 一夫(もり・かずお)

ジャーナリスト

1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、特別編集委員兼論説委員を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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