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農民はなぜ“暴徒化”するのか?

土地制度改革が中国経済発展のカギ

2013年11月5日(火)

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 先月発表されたGDP(国内総生産)伸び率が7.8%と、復調の兆しを見せた中国経済。9月の輸出が減少したことで減速懸念が出ていたが、投資家の不安を打ち消した格好だ。11月に中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)の開催を控え、党指導部も一安心といったところか。

 三中全会は、習近平国家主席と李国克首相が今後、どこまで踏み込んだ構造改革を打ち出していくかに注目が集まっている。この改革の行方が、今後の中国の経済成長を左右すると言っても過言ではない。これまでのスピードを重視した量の拡大から、生産性を重視した質への拡大へと転換するためには、市場原理に即した制度の整備など、改革が必要不可欠である。

 中でも、筆者が興味を持っているのは中国の土地制度についてだ。メディアでは、農村戸籍と都市戸籍という、中国にある2つの戸籍制度が都市と農村間の人口移動を制限し、農民の都市部での就業を妨げている問題、いわゆる「戸籍問題」がよく取り上げられている。中国の都市と地方の格差を表す象徴的な問題だ。戸籍制度問題を解決しない限り、中国の地方部の都市化は進まない。

 個人的には、土地制度問題も戸籍制度問題に劣らず中国の都市化を進めるために解決しないといけない問題の1つと考えている。中国では社会主義公有制のもと、すべての土地が国家の所有(国有地)または農民の集団所有(集団所有地)となっている。国有地については所有権が国にあるので、土地を使用する際は所有権を持つ国から、使用権を法律上の権利として譲渡される仕組みになっている。よって、中国の土地の売買は原則として、使用権の売買である。

 一方の集団所有地は、地方の各農村の経済組織に属する農民が共同生活を営み、生活する場として集団所有を認められた土地である。耕作地、農民の居住地や公共施設に充てられており、それ以外の目的で使用することを禁じられている。また集団所有地は、国有地のように売買することは認められていない。

いったん国有地化してから売買する

 だが、この仕組み自体が中国の都市化を進める上での障害になっている。中国が経済発展するにつれて土地開発が進み、土地が足りなくなってきているため、集団所有地を開発目的で転用する必要が出ているからだ。集団所有地は前に述べた通り、そもそも売買が認められていないので、いったん集団所有地を国有地にしてから、市場に流通させ、開発業者に譲渡されるという土地収用制度がとられている。中国の憲法には「公共の利益から必要と認められる場合に集団所有地は国有地に転化することができる」との一文がある。なので、農村部の土地開発のほとんどが、このやり方に従って進められているのが現状である。

 この土地収用のプロセスの主導権を握っているのが地方政府だ。農民から集団所有地を収用し、開発業者に転売する過程で多額の利益が地方政府の懐に入っている。地方財政全体に占める土地関連の歳入は、3~4割に上ると言われており「土地財政」と称されている。

 転用の際、問題となるのがもともとその土地に住んでいた農民の処遇だ。その土地の年間平均生産量の30倍を限度とした額を補償することが、現行の土地管理法で定められている。しかし、定められた補償額は土地の開発によって得られる市場価値と乖離している上に、将来の経済発展やインフレを考慮したものとは言えないため、農民の不満は高まっている。土地を失った農民は「失地農民」と呼ばれ、暴徒化している。中国社会科学院の調査によれば、中国全土で起こっている暴動の約4割が土地収用をめぐるものだという指摘もあるくらいだ。

 このように、都市化に伴う開発が進めば進むほど、中国社会が不安定になるという問題が浮上している。もっと土地を使用する農民側への補償額を手厚くしたり、譲渡のプロセスにおいて、農民が持つ権利をもっと拡大したりすべきだといった議論が高まりつつある。

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「農民はなぜ“暴徒化”するのか?」の著者

武田 安恵

武田 安恵(たけだ・やすえ)

日経ビジネス記者

大学院卒業後、2006年日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経マネー編集部を経て、2011年より日経ビジネス編集部。主な担当分野はマクロ経済、金融、マーケット。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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