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解雇規制だけが人材流動化の壁か?

2013年11月6日(水)

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 前回は、労働と資本を効率の低い分野から効率の高い成長分野へシフトさせることで、産業・技術の新陳代謝を高め、ひいては生産性上昇につなげていくことの重要性について述べました。新規参入企業が増加したり、新しい産業が生まれたりすれば、当然、そこに新たな労働需要が発生します。しかし、もし、そうした若い企業の労働需要を満たす十分な労働供給がなければ、新しい産業やビジネスの拡大を阻害する要因になりえます。

 先行き、日本における生産年齢人口は確実に減少していくため、成長産業や新しいビジネスの担い手となる労働供給源として、既存の労働力に注目することは自然な方向性です。近年、「労働市場の流動化」を求める声が高まっている理由のひとつは、限られた労働力の下で経済の新陳代謝を促進するには、産業や企業をまたぐ労働力のスムーズな移動が不可欠であるためです。

 しかし、実際には、日本の労働市場の流動性は国際的に見ても低いと考えられています。なぜ日本の労働市場の流動性は低いのでしょうか。その表層的な説明は簡単です。新卒一括採用と終身雇用は、戦後の日本の雇用慣行の代名詞と言っても過言ではありません。特に終身雇用システムには、解雇規制の存在があります。日本では過去の判例が解雇を厳しく制限し、企業が整理解雇を実施するには「4要件」と呼ばれる条件を満たす必要があるとされています。4要件とは、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)手続きの妥当性です。

 経営者サイドから見ると、不採算事業から撤退し、将来的に見込みのある事業にシフトしたいと思っても、既存の不採算部門の人員を解雇し、新事業に相応しい労働力を新たに採用する、という経営判断を実現することは容易ではありません。人が動かせないのであれば、資本(資金)だけ動かすことの意味も大きく損なわれます。こうしたケースが重なり、様々な業界再編の妨げになっている可能性もあります。

 しかし、解雇規制を見直せば、労働市場の流動性が高まり、生産資源の移転もスムーズになるのでしょうか。

コメント10件コメント/レビュー

年功型賃金の影響に触れていますが、月例賃金だけでなく退職金制度も問題です。公務員の制度が典型的ですが、支給額は最終俸給×勤続年数に応じた支給率、特に勤続が長いほど報奨的性格で支給率が上乗せされる設計です。これでは転職には生涯賃金で大きなデメリットが生じてしまいます。退職金制度を廃止しその分を年収に還元していけば、もっと流動化が促進できるのではないでしょうか。(2013/11/06)

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「解雇規制だけが人材流動化の壁か?」の著者

武田 洋子

武田 洋子(たけだ・ようこ)

三菱総合研究所チーフエコノミスト

日本銀行を経て、2009年4月より三菱総合研究所政策・経済研究センター主任研究員(シニアエコノミスト)、2012年4月より主席研究員(チーフエコノミスト)。内外経済分析を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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年功型賃金の影響に触れていますが、月例賃金だけでなく退職金制度も問題です。公務員の制度が典型的ですが、支給額は最終俸給×勤続年数に応じた支給率、特に勤続が長いほど報奨的性格で支給率が上乗せされる設計です。これでは転職には生涯賃金で大きなデメリットが生じてしまいます。退職金制度を廃止しその分を年収に還元していけば、もっと流動化が促進できるのではないでしょうか。(2013/11/06)

日本の労働者の流動性が非常に低く、また、労働生産性自体も低く、それを長時間労働でカバーしているというのは世界に知られた事実であり、その原因の一つに、すでに制度崩壊しつつある終身雇用を前提とした各種雇用制度がある。これは本稿を含め、多方面で語られているので主要な原因の一つとして速やかな是正が望まれるところであろう。トータルでの制度改善がなされ大きな痛みなく制度移行されることが理想的ではあるが、高度高齢化が進み、国際競争が熾烈を極めつつある現状では、それをなすために必要な時間が不足しているようにも感じる。この認識においては、解雇規制改革を先行させる形での改革を一定程度肯定できると考える。解雇規制からの改革では、おそらく失業率の大幅な上昇が発生するであろうが、それが労働者の危機意識を刺激し、労働生産性を改善させ、あふれる失業者が再就職のための各種支援策の整備を加速させる強い誘因となるだろう。日和見で先延ばしを好むが、危機においては団結して最適解を見つけることができるという日本人の気質を鑑みれば、このような劇薬も効果的かもしれない。(2013/11/06)

日本は解雇規制が厳しいとよく言われますが、半面、配置転換には会社側の裁量権が強く、住居の移動を余儀なくされる遠距離転勤を巡って争われた労働判例でも、会社側に有利な判決が出ているケースが実は多い。整理解雇の4要件についても、解雇に至るまでの企業側のツメが甘い(解雇できなくても能力の伴わない方を降格・降給すればペイするポストはあるのに、その降給規程整備さえ怠っていたりする)から、感情論の泥試合を演じ続けて結果的に解雇無効になっているケースが少なくありません。企業側と正社員陣営双方がなあなあの運用を行ってきた結果、非正社員がとばっちりを食らって十分な教育機会も受けられず、スキルも蓄積されないまま放り出される悪循環を止めない限り、国レベルでの競争力の回復は難しいと思います。(2013/11/06)

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三品 和広 神戸大学教授