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時をかけた少女

2013年11月28日(木)

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 いきなりテレビモニタに自分の顔が映るのは精神衛生上、すこぶるよろしくない。

 昔は若気の至りで毎週レギュラー番組に出ていたこともあるが、なんというか、私も20代で自分の分際というものをよく心得ていなかった。本当にすまなかった。

 それでも通常のテレビ番組は、人気ドラマ以外はあまり再放送されないので、誰かが意地悪でYoutubeにアップでもしない限り、そういう軽薄なイタリの姿を再見することはない(探し出さないように)。

 だが、映画は別だ。
 今どきはBSやケーブルテレビでチャンネルが増えたせいもあり、それなりに需要のある映画は、どこかしこでけっこうな頻度で放映される。

 もったいをつけているけれども、こんなマンガ家が「ちゃんと出ている」映画などあるわけもない。数日前にいきなりテレビに映ったその作品には、その他大勢のセリフもないエキストラとして、まさに「写っている」のであって「出ている」というのはおこがましい。

 私の顔を知らない人にとってはおそらく全然意識にひっからない背景のひとつであると思われるが、あいにく私は写っている当人なので、過去の恥ずかしい自意識を過剰に揺り動かされるというわけなのだった。

 かの映画は「天国にいちばん近い島」という。
 1984年の大林宣彦監督によるいわゆる「角川映画」の1本だ。

 原作は森村桂の有名な旅行記だが、映画はそれにヒントを得たオリジナル・ストーリーになっている。主演は前年に同じ大林監督の「時をかける少女」で鮮烈な映画デビューを飾った、当時17歳の新進女優・原田知世。

 映画の出演シーンに出くわさなくとも、そのころのことを思い返すと、私は色々といたたまれない気持ちになる。穴を掘って「いたたまれない男ここに眠る」と墓碑銘を掘った石板を立て、即、埋まりたいくらいだ。

 いや、後悔はしてない。当時のハシャギぶりを少しく反省はしているが、後悔は彼女にもあの頃の自分にも失礼だ。

 長年おつきあいいただいている読者には、もう辟易としている人も多いと思うが、そうでない読者の方もおられるのでイチから説明すると、前年の映画「時をかける少女」を観た当時20代半ばのマンガ家は、すっかりその映画と主演女優の虜になり、道を歩いて口を開けば「原田知世はいい」と突然叫び、原稿を描いていて展開に窮すると脈絡もなく「原田知世はいい」と登場人物に叫ばせるという……はっきりいえば気が違った毎日を送っていた。

 被害をこうむった友人や読者の方々には本当に申し訳ない。
 原田知世さん本人にもご迷惑だったろう。

 だが、気が違っていたのは私だけではなかった。

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「時をかけた少女」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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