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電気料金が新巻鮭に化ける「怪」

落とし穴だらけの電力システム改革

2013年12月18日(水)

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 ほんの10年ほど前まで、電力業界にはとある風物詩があった。ある時期を迎えると、社内外に「新巻鮭」が配られるというものだ。

 電力会社は発電所を立地している地域(電源地域)の名産品を、地域振興の一貫として贈答品などに使っている。新巻鮭も電源地域の名産品だ。問題なのは、新巻鮭の原資。実は、徴収しすぎた電気料金が新巻鮭へと姿を変えて、配られていたのだ。

 私たちが毎月支払っている電気料金には、「発電にかかるコスト」「送電にかかるコスト」「販売にかかるコスト」が含まれており、コストの合算に利益が上乗せされている。新巻鮭の原資は、このうち送電にかかるコスト部分。いわゆる「託送料金」だった。

 託送料金は、電力自由化を考えるうえでの勘所の1つだ。日本全国に張り巡らされた送電線は、一部の自営線を除いて10電力会社が保有している。新電力が電力を販売するには、10電力会社に託送料金を支払って、送電線を使わせてもらう必要がある。

 もし、新電力と10電力会社で送電に関わるコストに大きな差があったら何が起きるだろうか。いくら新電力が工夫に工夫を重ねて安く発電したとしても、託送料金が高かったら、発電コストの安さがコスト競争力につながらない。だからこそ、送電線の使用料金は、新電力と10電力で対等でなければいけない。

 このため、託送料金が適正な水準かどうかを国がチェックすることになっている。電力会社は託送料金でボロ儲けしてはいけないというルールになっているわけだ。

 話を新巻鮭に戻そう。電力会社が新巻鮭などの贈答品を社内外に配る時は、送電線の使用量が増えて、電力会社の見通し以上に利益が出たときだった。

 気候などによって電力需要が想定以上に増えれば、新電力の販売電力量が思った以上に増えることもある。託送料金には、あらかじめ送電網投資への減価償却費などは含まれているため、使用量が増えれば増えるほど利益も増える。

 米国や英国、ドイツやフランスなど、電力自由化を進めている国々は、送電事業の利益が想定を上回った場合には、翌年の料金を引き下げるといった措置が取られる。だが、日本は、そうなってはいない。

 わざわざ高価な新巻鮭を大量に購入することで過剰になった利益を減らし、託送料金の引き下げを回避していたのだ。

 託送料金は、新電力のビジネスモデルの根幹であるだけに、新電力はかねて「高額すぎる」と訴えてきた。2002年の電力自由化後、料金は低廉化され、新巻鮭などが配られることはなくなったと聞く。

 ただし、将来の電力市場を見据えたときに、託送料金が重要なポイントであることに変わりはない。うっかり舵取りを間違えば、電力システム改革が形骸化する可能性すらある。

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「電気料金が新巻鮭に化ける「怪」」の著者

山根 小雪

山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション、日経エコロジーを経て、2010年1月から日経ビジネス記者。エネルギーを中心に、自動車や素材など製造業を担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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