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権威主義が「成功モデル」という皮肉

グローバル経済と民主国家の危機(前編)

2014年1月6日(月)

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 フランシス・フクヤマ氏が、自由民主主義の最終的な勝利と「歴史の終焉」を高らかに謳ってから、今年ですでに四半世紀を迎えようとしている。共産主義体制と東西冷戦の「終わりの始まり」は1989年のことであり、経済システムとしての自由市場経済と政治システムとしての代議制民主主義――すなわち自由民主主義――が、人類普遍の最高にして最終の体制として勝ちのこり、その旗手としてアメリカ合衆国が覇権をとる新世界秩序の形成が思い描かれたわけである。

 実際、経済のグローバル化は、ウルグアイ・ラウンドを経て1995年に設立された世界貿易機関(WTO)のみならず、さまざまな国家間や地域内の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を通じて加速度的に推し進められ、現在交渉中の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に至っている。

 またサミュエル・ハンチントンの言う民主化の「第三の波」は、ヨーロッパなどの旧共産圏に限らず、アジアでは韓国や台湾、そしてラテンアメリカ諸国などにもおよび、さらに最近でも2010年暮れに始まった「アラブの春」により多くの権威主義体制が揺らぐところとなった。

 しかし、2014年が始まるに際してあらためて世界を見渡すとき、現状は自由民主主義の最終勝利と言うにはほど遠く、むしろその著しい形骸化と危機が浮かび上がってくるのだ。

アメリカを揺るがす市民たちの反乱

 自由民主主義体制を牽引する超大国であることを自他ともに認めるアメリカにおいて、2011年秋から冬にかけて、資本主義経済と代議制民主主義の破綻を告発する一大運動が前代未聞の大きな盛り上がりを見せた。「ウォール街を占拠せよ」を合い言葉にした「オキュパイ(占拠)運動」である。

 サブプライムローン、そして2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機のあおりを受けて不景気が広がり、若年層を含めて雇用状況が著しく悪化すると、金融機関の「強欲」(greed)とそれを野放しにしてきた政府に対する批判が「われわれが99%である」というスローガンに結晶し、ウォール街のあるニューヨークのみならずアメリカ全土(そして世界各地)にオキュパイ運動は拡大した。

 グローバル資本主義の総本山とも言うべきアメリカにおいて、自由市場経済の実態がグローバル資本による寡占支配と大多数の市民の搾取にすぎないとする言説が大きな注目を浴びるようになったこと自体驚きに値するが、それと合わせて、そうしたグローバル資本の専制に無力なばかりか加担してきたとして、民主党のオバマ大統領を含む政治エリートたちもまた槍玉にあげられたのであった。

 代議制民主主義は機能不全に陥っており、形式上「選挙」で選ばれている政治エリートたちはグローバル企業に買収されてしまっている。かくなるうえは、公共空間を「占拠」することによって、99%の市民たち自らが直接行動で存在を示さなくてはならない、というわけである。

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「権威主義が「成功モデル」という皮肉」の著者

中野 晃一

中野 晃一(なかの・こういち)

上智大学国際教養学部教授

1970年東京生まれ。東京大学文学部哲学科および英国オックスフォード大学哲学・政治コース卒業、米国プリンストン大学で博士号(政治学)を取得。専門は比較政治学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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