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たまには「難解」に挑んでみたい

世界的な学者の業績・井筒俊彦の全集を読む

2014年2月4日(火)

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 今年は井筒俊彦の生誕100年の年になる。

 ここで井筒俊彦と呼ぶのは、大いなる畏敬の念を持ってのこと。井筒さんと言うほど親しかった仲では全くないし、直接にも間接にも井筒先生と言うような関係でもない。

 そこでたとえ釈迦でもキリストでも一々様をつけないで呼べるように、偉大な言語学者であり、思想家でもあった井筒俊彦に対する尊敬の心を持って井筒俊彦、または井筒と呼ばせてもらうこととする。

 井筒俊彦は本来言語学者として出発した。

 司馬遼太郎との対談記録が残されているが、それによると、助手になったばかりの頃にタタール系の一人のトルコ人の老人の許でアラビア語を習い、「イスラーム抜きにアラビア語をやることは愚劣だ」と言われ、英語の『マホメット伝』を題材にアラビア語を学んだ。

 そのうちに来日したムーサー・ジャールッラーハというイスラム世界でも尊敬される大学者に教えを乞うことになった。ムーサー先生は多くの本を読んで全て頭に暗記しており、「これが古来イスラームの学者がやって来たことだ」と教えられた。

 井筒俊彦の凄いところはその集中力にあり、更にはそこから本質を読み取ることの出来る実に鋭敏な感受力である。その感受力、理解力はどこから来たのか。語学の力を生かしてその国の言語で本来のテクストを読み、理解して考えることが出来たためである。

アラビア語を習い、コーランを学び、マホメットを知る

 井筒自身がこの対談の中でこんなふうに言っている。

――方法を学ぶことは易しいけれども、実際はテクストが読めないんですよ。アラビア語は書いてないことを読まなきゃならないんです。――

 もちろんこれはアラビア語ばかりのことではない。私たちが、今や文字に書いてあることしか理解していないことへの痛烈な反省であり皮肉でもある。

 その井筒の語学能力がいかにスケールの大きなものであったかについては、生前200カ国語に通じるという噂まで流布されていたことでも判る。司馬遼太郎との対談の中でも、井筒はある編集者から「先生は三十数ヶ国語ができると言われているが」と聞かれて、「いま使えるのは十五ぐらいなものです」と答えた話が収められている。

 何れにしても、その集中力は3カ月間毎日1時間ずつ10カ国語を学び、次の3カ月で短い文章を丸暗記するというものだ。

 その上に立って、コーランを理解し、ギリシャ哲学を理解するのだから、そのレベルの高さを察することができるわけである。

 私の国際部長時代の経験では、一見きわめて流暢に外国語を話す人が出張していい仕事をするとは限らない。人はそういった連中のことを皮肉を込めて“英語屋”と呼んだりするのだが、時として流暢だが中味のない会話をして得々としている人もいるのだ。

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「たまには「難解」に挑んでみたい」の著者

福原 義春

福原 義春(ふくはら・よしはる)

資生堂名誉会長

1931年東京生まれ。1953年慶応義塾大学経済学部卒業後、資生堂入社。米国法人社長を経て、フランス、ドイツに現地法人を設立。1987年代表取締役社長。1997年代表取締役会長。2001年名誉会長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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