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物価が上がった理由と国債の新リスク

成長率や物価動向と乖離する長期金利

2014年2月12日(水)

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 債券市場関係者に牛熊(うしくま)と呼ばれて親しまれている久保田博幸と申します。今回、日経ビジネスオンラインの執筆陣に加えさせていただきました。私は債券市場をディーラー、アナリストとして30年近く見てきており、債券の情報をネットなどを通じて市場関係者などに配信してきました。その経験を生かして今回、債券市場や国債、日銀などに関するコラムを書かせていただきます。特に2013年4月に日銀が決定した異次元緩和と呼ばれた質的・量的緩和政策は今後の日本国債に多大な影響を及ぼす懸念があり、このあたりを中心に、債券市場と日本とのかかわりについて切り込んでみるつもりです。

*   *   *

 日銀の異次元緩和により、物価は上がったように見える。日銀が目標としている消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、2013年12月に前年比1.3%の上昇となった。2013年通年でも前年比0.4%の上昇と5年ぶりのプラスとなった。ところが、日銀が異次元緩和を行ったことで人々のインフレ予想に変化が生じて、それにより物価が上がったわけではない。それではなぜ、ここにきて日本の物価は上がったのか。その大きな要因の1つが円安である。

 2012年11月あたりから急激な円安が進行した。2012年11月の初旬にドル円は80円割れとなっていたが、2013年5月には100円台に上昇した。今年の物価上昇のかなりの部分は円安の影響で説明ができる。福島第一原発事故の影響もあり、エネルギー価格の上昇に円安の影響も加わって輸入価格が上昇した。エネルギー価格の上昇だけではなく、輸入する材料費の値上がりも影響した。

 円安については、アベノミクスの成果であり、日銀の異次元緩和によるものではないかとの見方もあろう。しかし、それについても私は懐疑的である。2012年11月に、次期首相の有力候補となった安倍自民党総裁からアベノミクスと呼ばれる政策が打ち出された。「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」との発言にもあったように、それは脱デフレを掲げたリフレ政策であった。これをもってパラダイムシフトが起きたとの見方もある。本当にそうであったのか。

パラダイムシフトは海外で起きていた

 パラダイムシフトには興味深い前例がある。昭和初期の高橋是清による政策、いわゆる高橋財政である。この高橋財政のパラダイムシフトとアベノミクスのそれにはいくつか共通項があるとともに相違点もある。

 共通項としては、政権が変わることによる期待が出ていたこと。さらに円安を導きやすい地合ができていたことである。高橋財政のパラダイムシフトの主要因は、金輸出の再禁止による金本位制からの離脱にある。これにより円安・金利安と財政拡大が可能となった。このときの日銀の国債引き受けはあくまで財政拡大の手段にすぎない。現実に日銀の国債引き受けが開始されたのは高橋財政の開始から1年後であった。

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「物価が上がった理由と国債の新リスク」の著者

久保田 博幸

久保田 博幸(くぼた・ひろゆき)

金融アナリスト

証券会社の債券部で14年間、国債を中心とする債券ディーリング業務に従事。幸田真音『日本国債』の登場人物のモデルにも。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官