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職人と芸術家のロンド

2014年2月12日(水)

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 それにしても人は人が好きだ。

 私は、なにせ家に閉じこもってマンガ家をやっているくらいだから、ありていにいって人はあまり好きくないのだが、世の中の人は本当に人間が好きなのだった。

 ええと、その話にはあとでリンクする予定だ。

 巷を騒がせているゴーストライター問題だが、渦中の当事者に近しい人のみならず、実に様々な人が様々な立場から様々な見解を言挙げている。

 私はといえば「ゴーストライダーを思い出す人とゴールドライタンを思い出す人の戦い」などと意味不明のつぶやきをして、そのままそれっきりだ。なんにせよ、どちらを思い出しても、その人は私同様あまり人づきあいはよくなさそうだ。

 保留しているのは、なにしろまだ不明な点が多い、ということもある。全聾、もしくは難聴とされていることに対する検証も、かなり繊細な注意が必要だと思う。先走った不確かな予断で両者への批判、もしくは擁護的なことは書きたくない。

 とはいえ、これだけ色んな人が色んな立場から発言しているということは、この問題がそれだけ多くの人の琴線に触れる多様な要素を含んでいたということだろう。

 とくに創作者や、そのスタッフにとってはそうだと思う。

 というわけで、当事者からは少し離れてこの件を考えてみることにした。
 すると、この一週間の「リケジョ騒ぎ」「オリンピック」「都知事選」という一連のニュースが、なんとなく同じ命題上に並ぶような気がしてきたのだった。

 コラム書きやマンガ家のネタ探しという少々浅ましいアプローチから見ても、今回の騒ぎには色んなテーマを見て取ることができる。

 まずそもそもゴーストの定義は、作家の定義は、という問題がある。

 総合芸術である映画やアニメでは、撮影技術もわからない人、自分では絵が描けない人が「監督」になることが、まま、ある。この場合の監督は「こういうものが作りたいと全体像が見えている人」だが、実際の仕事は俳優やスタッフなど他人による分業だ。それでも出来た映画は、多くの人がその監督を「作者」と考える。これは建築も同じだ。

 もちろん、これらは堂々と名前が出ているのでゴーストではない。

 複数名のスタッフを抱え、プロダクションで描く昨今のマンガも同様だ。先生は下描きしかしない、というのはわりとあたりまえで、顔しか描かない眼しか描かない、といった伝説もよく聞く。お話ですら外部の作家が付く場合もある。ときには担当編集者が実質の原作者という例もあり、最後のケースは限りなく「ゴースト」に近いような気もする。

 いわゆるタレント本は(もちろん例外もあるが)多くは別のライターが書くものであったし、高名な著述家であっても、昨今ブームの新書企画の多くは、まとめ役のライターを立てての語りおろしだったりする。業界では「新書は編集者が作るもの」というのが、そう間違っていない認識だろうと思う(これも、もちろん例外はあります)。

 この場合、作者の名前は一種のブランドというか、マーケティングを考えてのプロジェクトのアバターのようなものだ。半藤一利が書いていた大宅壮一名義の『日本のいちばん長い日』等、そういう企画は昔から枚挙にいとまがない。翻訳だって、ほとんど弟子や教え子の下訳を採用しつつ師匠名義で出しているタイトルもある。

 チームのフロントキャラとしての「作者」。

 ある種のポピュラー音楽や芸能では、そのキャラは当然のように半虚構化していく。昔のプロレスラーのプロフィールだ。ザ・マミー「現代に甦ったミイラ!」「南米の奇病に冒され全身を包帯に包んだ生ける粉ふき男!」「ほんとうは姉妹ではない叶姉妹!」

 そこまで極端でなくても、たとえば泉谷しげるのようなフォークやロック色の強いミュージシャンであっても、当初は「東北から上京」という虚偽のプロフィールで売り出された(両親は東北出身だが本人は東京育ち)。

コメント13件コメント/レビュー

●我が意を得たり、の内容でした。 ●本文中や、現時点でのコメント欄には出てきませんが僕には一連の偽装事件(特にミートホープ)に近い構図に思われます。 ●騙された!と怒る人は一体何に対して金をだしていたのだろうか? クズみたいな音楽だけど聾唖だから支出していたのだと言いたいのであれば、それはそれで酷い愚弄だし。 (2014/02/12)

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「職人と芸術家のロンド」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

●我が意を得たり、の内容でした。 ●本文中や、現時点でのコメント欄には出てきませんが僕には一連の偽装事件(特にミートホープ)に近い構図に思われます。 ●騙された!と怒る人は一体何に対して金をだしていたのだろうか? クズみたいな音楽だけど聾唖だから支出していたのだと言いたいのであれば、それはそれで酷い愚弄だし。 (2014/02/12)

ゴーストライターというコトバを久しぶりに聞いた。私はすぐにゴーストバスターズが思い浮かび、あまちゃんの中で杉本哲太が歌うシーンを想像してしまった。とり・みきさんも書いていたが、佐村河内氏の件は芝エビ事件と似たようなもんで、ブランドもしくはそれ風のスタイル、見た目に騙されたのが悔しいのでしょう。ただし、障害を偽っていたのなら、それに対しては、償いをすべきでしょうね。(2014/02/12)

ゴーストと言えば「GHOST IN THE SHELL」(c)士郎正宗を思い出します。自分もタレントの本とか漫画原作のゴーストライターをやってました。今回はなぜかゴーストライターが正義の味方みたいに扱われてますが、ゴースライターが正体を明かすのは殺し屋が依頼人を明かすのと同じくらいご法度のはずです。近頃は違うのかな?(2014/02/12)

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