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3回転半の孤独

2014年2月26日(水)

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 巨大熊が聖火をあっけなく吹き消してソチ五輪が終わった。

 日本ではソチよりも深刻な雪害が拡がる中、そしてかの地においても対岸の大統領が流血の内戦を縫って夜逃げするという大変な事態が進行している最中に、雪と氷の祭典(昔は常套句だったが最近あまり使いませんね)は終了した。

 巨大熊の名前はついぞ覚えなかった。
 くまノフか、くまスキーか、くまチンだったか……名前なんぞ最初からついていなかったかもしれないが、便宜的に以下ではくまチンと呼ぶことにするチン。

 しかし、そこは芸術の国。開会式も閉会式もさすがに魅せた。
 BGMにはことかかない国だ。銀盤の上でもなじみの深い、ここ2世紀の間に蓄えられた圧倒的なミュージックコンテンツが、イベントのドラマ性を盛り上げるのに貢献していた。

 日本の視聴者の皆さんの2020年のセレモニー演出への不安をいやが上にも煽りながら。

 私のマンガなら、巨大なロボマスコットが出てきた時点で、まずまちがいなくこの3匹が暴走して会場を壊し始めるところだが、さすがに現実はそこまで面白いことにはならずに、くまチンは固形の涙を流して祭典をしのんでいた。

 しかし、我々はル・カレやフォーサイスやフリーマントルやゴルゴ13を読んでいるので、ロシアの格言通りモスクワは涙を信じないことを知っている。くまチンがメカニカルな涙を流している最中に、貴賓席のプーチンへの元へは刻一刻とウクライナ情勢のメモが届けられ、指示を飛ばしていたに相違ないのだ。

 ……と、ずいぶんとケチをつけているようだが、ひねくれて世の中を眺めるのはギャグマンガ家の習い性だ。我々の一族は忍者が成長の早い麻を飛び越えるように、幼いころから世界を斜めから見るように教え込まれ鍛えられてきた(誰にだ)。

 正直なことをいえば、私もまた多くの視聴者の皆さん同様、閉会式でも流れたラフマニノフの音楽に乗せた浅田選手の演技で滂沱の涙を流していた。

 くまチンとは違う液体の涙だ。

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「3回転半の孤独」の著者

とり・みき

とり・みき(とりみき)

マンガ家

熊本県出身。ギャグマンガをメインにしながら、エッセイコミックやストーリー物も手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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