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東京五輪?あれは悪夢みたいだった

『銀座にはなぜ超高層ビルがないのか』と街づくり

2014年3月17日(月)

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 「この前の東京オリンピックはどうでした?」と編集長に聞かれた。

 冗談じゃない。あれは悪夢みたいな出来事だ。それ以前に突然のように父を亡くし、その頃は結婚したばかりで、会社では課長になったかならないかの働き盛りだ。ところがそこへ持って来て全く思いもよらない体験の最中で、オリンピックどころではなかった。

 オリンピックの開催が決定して、世の中はすっかりはしゃいでいた。東京都の知事はそれに備えるように東龍太郎知事となり、新聞にはオリンピックのニュースが満載だ。

 その中にオリンピックのためのインフラとして高速道路網を整備するという記事があって、その地図を見るとどうも僕の家のあたりを通ることになりそうなのだ。

 悪い予感がしたが、手を廻して予定線の地図を見せてもらうことが出来た。あろうことかやはり僕の家のあたりが高速道路二号分岐線の予定になっているのに間違いなさそうだ。

 それまで僕の家は白金の自然教育園に接していたので、まさかそんなに無謀な計画を立てるとは思えなかった。

有り得ないと思っていたのが甘かった

 今は文部科学省の所管になって自然教育園になっているが、かつては松平讃岐守の下屋敷、それからは海軍火薬庫になったり、宮内庁の御用地になったりした武蔵野の面影を残す緑地であった。しかも古く中世豪族の邸跡とも伝えられ、それが故に白金長者の邸とも言われ、また目黒区中丸から品川区長者丸という豪族の居城の跡とも言われた。

 その出城を連なる土塁には樹齢数百年のスダジイが並木になっていた。

 また松平の下屋敷になっていた間に、そこに平賀源内が出入りし、そのせいかどうか、この辺には有り得ない珍しい植物が自生するように生えているのだった。

 いくらオリンピックと言ったって、こんな珍しい東京の中の自然環境をめちゃくちゃにするなんて有り得ない、と思っていたのが甘かった。

 オリンピックのための高速道路予定線は、この自然教育園のスダジイ並木の一部をかすめて私の家の上を斜めに通るのだ。

 やがて道路公団の、見るからにベテランらしい慇懃なおじさんが会社に電話をかけて来て「お会いしたい」という。こうなると大蛇に睨まれた蛙のようなものだと本能的に思った。

 日曜日に会うと、「こうこう、こういうわけでお宅は立ち退いてもらわねばなりません。期限は一年後、更地で明け渡すこと、一木一草、庭石までも残さないこと。一切の経費は負担しますから安心して下さい」と言う。何が安心なものか。

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「東京五輪?あれは悪夢みたいだった」の著者

福原 義春

福原 義春(ふくはら・よしはる)

資生堂名誉会長

1931年東京生まれ。1953年慶応義塾大学経済学部卒業後、資生堂入社。米国法人社長を経て、フランス、ドイツに現地法人を設立。1987年代表取締役社長。1997年代表取締役会長。2001年名誉会長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官