靴の修理などで知られるミスター・ミニットを見たことがない人は、都心にはほとんどいないのではないでしょうか。靴がいきなり壊れてしまったり、鍵のスペアを作りたかったりしたときに、駅の構内にあるお店にぱっと駆け込んで、5分とかからず修理してくれるサービスは有難いものです。
そんなミスター・ミニットの新社長に、迫俊亮(さこ・しゅんすけ)氏が2014年4月1日付で就任することが報道されました。三菱商事を入社後半年で退職し、途上国発のファッションブランド創造を目指すマザーハウスで海外店舗開発などをした後に、ミスター・ミニットに転職、28歳の若さで老舗企業の新社長への昇進です。ミスター・ミニットは現在ファンド傘下にあるので、よくある縁故昇進とは異なり、プロ経営者としての社長就任ということになります。
そんな迫社長への取材を申し込んだところ、快諾いただき、ミスター・ミニット三田赤羽橋店に行ってきました。東京タワーのふもとにある店舗を訪れると、業務時間外の社長が自分で靴を磨いている姿が。

28歳で老舗企業の社長というのは、世界ではよくある話でもあります。世界経済フォーラムの最若手グループであるグローバルシェーパーズ(迫氏も筆者もそのグループに入っています)の中には、20代ですでに驚くような業績をあげている人も少なくありません。
とはいえ、経営者の平均年齢は絶対値としては決して低くありません。コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーの2010年のレポートによると、北米・欧州では52 歳、日本以外のアジアでは51歳がCEO(最高経営責任者)の平均年齢(日本では60歳)です。
若さ=経験不足というのはあまりに短絡的な批判だ
なぜ経営者が高齢になりがちかというと、物事を総合的に判断するために必要とされる統合知は経験の産物である側面が大きく、若いだけだとなかなかこの能力が鍛えられないということがあるのでしょう。この点については拙著でかなりの分量を割いて取り上げているので、もし良かったらご覧になってください。
しかしながら、若さ=経験不足と決めつけるのはあまりにも短絡的です。というのも、若さと経験不足は完全に比例するものではないからです。実際、歴史の転換点においては、20代・30代のリーダーたちが数限りなく登場しています。
その人達は、若いうちからかなり濃い経験を積んでおり、それゆえに若さに関係なく、重大な経営判断ができる器を備えています。例えば、明治維新を担った志士たちが急速に育っていったのは当時の社会背景からは無縁ではないのでしょう。なので、日本の現在の文脈でいうと、若いうちに濃い経験を積んできた人であれば、20代後半・30代前半であっても企業経営を任せるに足る人材になりうるのかもしれません。
よい記事でしたが…そろそろ登場人物の年齢をタイトルに記載して読者を釣る手法やめませんか。もう年齢でライフステージが固定される時代ではないでしょう?(2014/03/20)