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尖閣をクリミアにしないための日印協力

2014年3月26日(水)

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 今回からコラム「日印『同盟』時代」が始まる。これは、「ニュースを斬る」で掲載した計12作のコラム――「インド軍の台頭で米中のパワーバランスが変わる?!」から「インドが日本に示した奥の手」――が好評だったため連載にするものである。これまでのものは筆者の名前の部分をクリックするとまとめられている。

 このコラムを始めたのは、日本とインドの安全保障協力が非常に深まっているためだ。日印間では2005年以来、首脳の相互訪問が続いている。海上自衛隊とインド海軍は共同演習を行うようになり、今や、海上自衛隊が装備しているUS-2救難飛行艇をインドに輸出する交渉を行っている。海洋、サイバー、ASEAN政策、アフリカ政策でも協議を行い、連携を深めている。日本が、このような深い安全保障関係を持つ国は、インドのほかにはアメリカとオーストラリアだけである。なぜこのような深い関係になりつつあるのか、分析しておく必要がある。

 2014年3月、日印連携の重要性を説明するのにちょうどよい事例が起きた。ロシアがクリミアを併合したのだ。それがなぜ日印関係していると言えるのか。

クリミア併合の背景には欧ロのミリタリーバランスの変化

 今回のロシアによるクリミア併合の背景には、ヨーロッパにおけるミリタリーバランスの変化がある。ヨーロッパでは、冷戦後、軍備の削減が続いていた。ミサイル防衛システムの配備など一部の例外を除き、アメリカも軍事力を徐々に引き上げ続けてきた。しかし、ロシアは違う。

 ロシアは、ソ連が崩壊した後、軍の再建に取り組んできた。そして冷戦終結から20年以上の歳月がたち、ロシア軍は立ち直り始めている。そして立ち直りに成功するにつれて、領土を少しずつ拡大し始めているのだ。

 その始まりは2008年のグルジアにおける戦争だった。ロシアは、南オセチアとアブハジアという2つの地域の帰属を巡ってグルジアと戦い、2つの地域を独立させた。そして今回はウクライナからクリミアとセバストポリを独立させ、結局、ロシアに併合したのである。

中国も動く?

 この動きは、アジアの安全保障情勢を理解する上で重要だ。なぜならこれは、単にヨーロッパで起きている現象ではなく、アジアでも起きている現象だからである。特に中国の動きはロシアのそれとよく似ている。

 中国はこれまで、ミリタリーバランスが有利になると、領土を拡大してきた歴史がある。1973年、ベトナム戦争の終結でアメリカ軍が撤退した翌年、南ベトナム軍が駐留していた西沙諸島(パラセル諸島)を攻撃、占領した。1987年にソ連軍がベトナムから完全撤退した翌年、南沙諸島(スプラトリー諸島)のベトナム軍を攻撃し、6つの岩礁などを奪取した。そして1992年にアメリカとフィリピンが米比相互防衛条約を見直し、在比米軍が撤収すると、フィリピンが領有していたミスチーフ礁(南沙諸島の一部)を占領した。

 昨今、中国の軍備の近代化は急速で、毎年、ミリタリーバランスは中国に有利になっている。中国が保有する満載排水量3000トン以上の大型水上戦闘艦は1990年には16隻だったが、今は39隻になっている。同じ期間に新型戦闘機は、ゼロから929機まで増えている(注1)。

(注1)本稿における「新型戦闘機は、主に1980年代以降に配備された戦闘機を指し、中国のSu-27、Su-30、J-10、J-11、JH-7、アメリカのF-14, F-15, F-16, F/A-18, F-22, F-117, AV-8, TAV-8B, A-10, OA-10が対象。International Institute for Strategic Studies, The Military Balance を用いて数えた(拙稿「日印空軍連携で日本の航空戦力が変わる!」参照)。

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「尖閣をクリミアにしないための日印協力」の著者

長尾 賢

長尾 賢(ながお・さとる)

未来工学研究所研究員

2001年、学習院大卒。自衛隊、外務省勤務後、学習院大学大学院でインドの軍事戦略を研究、博士取得。現在、未来工学研究所研究員と日本戦略研究フォーラムの研究員、学習院大学東洋文化研究所客員研究員。専門は安全保障、インド。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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