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 企業のグローバル化に伴い、最も難しいのが従業員同士の性差、国籍の違い、年齢差などからくる「断層」をどう埋めるかだ。断層をもたらすものの1つに「言語」がある。「MBAが知らない最先端の経営学」筆者であり、米国の大学で8年間教鞭を執った経営学者の入山章栄・早稲田大学ビジネススクール准教授が、「楽天の英語公用語化」について研究したツェーダル・ニーリー米ハーバード大学経営大学院准教授と、「グローバル化に必要な企業の組織づくり」について幅広く語り合った。

(写真は稲垣純也、以下同)

入山:今日はお時間ありがとうございます。実は私、日経ビジネスオンラインで、世界の経営学の最先端の知見について連載しています。ニーリーさんが最近、楽天の英語公用語化についてアカデミックに研究されたことに興味をもちまして、お話を伺いたいと思っています。

 ニーリーさんは、経営学の学術誌「ジャーナル・オブ・インターナショナル・ビジネス・スタディーズ」誌にもそのようなテーマで学術的な論文を発表されていますね。

ニーリー:光栄です。私の論文まで読んでいただいて。私は世界中の数多くの企業を対象にして、企業のグローバル化と、それに伴う言語の問題についてずっと研究してきました。論文ではERP(統合基幹業務システム)ソフトウエア大手、独SAPのグローバル化について書いています。

入山:SAPですか。

ニーリー:そうです。最初はSAPのドイツ、米国、インドにあるグローバルチームについて調べていました。SAPはグローバル化の混乱を避けるために、グローバルチームを3つに分けていたんですよ。しかし多くの研究によれば、拠点を複数持つと、不安定要素を余計に持つことになる。研究の1年目に143人の従業員に話を聞きましたが、実際に異口同音に聞いた意見が、「チームを1つにしようと思うと、言葉が最大の障壁になる」という声でした。

入山:日本人よりはるかに英語が堪能なドイツ人でもそうなんですか。学術的な話をすると、ニーリーさんはその説明にフォルトライン(=組織の断層)理論を使っておられた。これは、グループの中に複数の共通項を持つ人が集まると、それぞれがグループでかたまりがちになり、コミュニケーションが難しくなるという理論です。

 先行研究では、ジェンダーや年齢、国籍がフォルトラインになると指摘されていました。実は、まさにこのテーマで、私は日経ビジネスオンラインに記事「『日本企業に女性はいらない』が経営学者の総論」を書きまして、中途半端に数値目標だけで女性や外国人を登用するのは組織にフォルトラインを作るのでリスクも大きい、ということを主張したのです。しかしあなたは、それに加えて「言語」もフォルトラインであると指摘したわけです。

ニーリー:そうです。言語の障壁はとりわけ、社内における勢力争いがある時に、大いに「炎上」のタネになるんです。ただそういったことをあからさまに指摘するのはいろいろと微妙なので、論文では、「言語はグローバルチームにとってかなり重要なフォルトラインである」と指摘するにとどめましたけど。

入山:それは、グローバル化を推し進めたい日本企業にとってはゆゆしき問題ですね。


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