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タガメの共食いが作り出す「ママ友社会の闇」

2014年4月18日(金)

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 前回のコラムで、「タガメ女」という言葉が事実上の放送禁止用語扱いを受けた、と書いた。だが、この言葉に対する感覚にはかなり地域差がある。

 私は関西を基盤に活動しているが、大阪のラジオでは朝のパーソナリティ番組のスタジオ生録で忌憚ない議論ができた。また、日頃お付き合いしているママ友たちも、道で自転車ですれ違いざまに「本出したんやて~。うちの旦那が言うてたわ! 早速買うしな~」とか「うちは家族で読んでるけど、私ばっちりタガメや~」と憚ることなく話題にしてくれる。関西では「自虐ネタ」というコミュニケーション手法が重要な位置を占めており、面白ければネタにするというノリがあるからかもしれない。

 実際、周囲にはこの本を夫婦で相互チェックしながら読んでお互い反省し、ぎくしゃくしていた夫婦仲が良くなった、とか「私も旦那の愚痴ばっかり言うてるけど、ええかげんにしとかんと旦那に逃げられるわ~」とコミュニケーション改善のきっかけとしてくれる人たちも少なくない。何よりも驚いたのが、子供の同級生の中学生が商店街でこれもすれ違いざまに「あ! このあいだ本読んだで!」と生き生きした笑顔で声をかけてくれたことだ。10代前半のお子さんたちは意外とストレートに意味を受け取り、理解することができるのかもしれない。

大都市圏に偏る「生息域」

 話が少しそれたが、タガメ女に関する地域差という点で、やや意外な発見もあった。本の出版後、福井県三国町で男女共同参画推進グループによる講演会があり、講演終了後にディスカッションの時間が設けられたのだが、そこで「福井はそもそも専業主婦という人の割合が非常に少なく、男女とも何らかの仕事をしているし、年金も別々なのでタガメ女と言われてもあまり心当たりのある事例が思い浮かばない」という意見が次々出された。

 福井県は男女共同参画の比率が全国でも最も高い地域だという。子育て中の方も含めて多くの女性は農業や地域の仕事などに何らかの形で従事している。よそから福井に転勤してきたある女性も、始めのうちは専業主婦をしていたが、この地域では「専業主婦=遊んでる」と見なされるため、数年を経ずして働き始めたという。実際働いてみると、周りの家族やご近所が子育てをサポートしてくれて、かえってやりやすくなったとのこと。当然、社会保険も夫婦でそれぞれ別に支払っており、老後についても独立性が高い。共働き率全国一の福井県坂井市では、女性が家事育児と仕事をこなすことで負担が重くなりすぎる傾向をいかに家族や第三者で軽減できるかが課題である、とのことだった。

 逆に有配偶者女性の就労率が低いのは関東平野、京阪神、福岡などの大都市周辺だ。必ずしも「タガメ女=専業主婦」ではないが、有力な母集団はやはり大都市圏のサラリーマン家庭の配偶者女性で、かなり明確な地域分布が存在することが窺える。これは次回以降で取り上げるタガメ女システムの生成と崩壊のプロセスと深く関わるが、タガメ女の主たる生息域は、里山や田んぼを造成して高度経済成長期以降に作られた新興住宅地やマンションである。そこには、有償労働から疎外される一方で「消費」のターゲットとなる、ある種の均質空間が形成された。タガメ女システムはまさに、こうした均質空間に特有の社会現象であったということが浮かび上がってくる。

 団地や集合住宅、住宅密集地域周辺のコンビニエンスストアなどでひっそりと売られている「ご近所マンガ」と呼ばれる雑誌をご存知だろうか。読者層は主として主婦(9割が専業主婦あるいはパート勤務とのこと)。A5サイズの分厚い月刊漫画誌で、数万部を過去10年以上にわたって発行しているという。内容は伝統的な嫁姑問題、不倫、ご近所のママ友イジメなどが取り上げられ、そのうちのかなりの部分が読者投稿によるものだという。

 昨年、こうした雑誌でタガメ女・カエル男の特集が組まれ、タガメ・カエル本の表紙イラストを書いてくださった腹肉ツヤ子さんの作品も掲載された。同雑誌の編集者の女性にお聞きすると「日頃、鬱憤をためている読者にとって、タガメ女の話は思い当たるところが多い。自分だけでなく自分の身近な人にも、息苦しさに悩まされている人が多いんじゃないでしょうか」とのこと。同漫画誌の販売地域を聞いたところ、首都圏、近畿、中部の大都市圏が合わせて約半分。残りの半分では東北・北海道が多いという。この販売エリアはそのまま、先に挙げた有配偶者女性の就労率の低い地域と一致する。

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「タガメの共食いが作り出す「ママ友社会の闇」」の著者

深尾 葉子

深尾 葉子(ふかお・ようこ)

大阪大学大学院経済学研究科准教授

1987年、大阪市立大学大学院前期博士課程東洋史専攻修了。中国内陸農村部における環境問題の社会的歴史的分析などを手がける。著書に『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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