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反対者なき政治という安倍政権の不幸

使い古された枠組では政治を捉えきれないイライラ感

2014年4月22日(火)

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 21世紀の政治を、どう説明したらよいのだろうか。小泉政権から短命の保守政権3代、そして政権交代の結果としての民主党政権が、これまた3代とも短命に終わった。そしてまたも政権交代だ。1年前に松原隆一郎との対談本『政治の終焉』(NHK出版新書)にて、「追憶の党」が再登板することの意味を探った。そもそも安倍のカムバック自体が「追憶」そのものを体現している。その上内閣の顔ブレを見れば、小泉政権以来の保守政権を担った人々が、続々とカムバックし「追憶」の内閣を動かし難いものにしていた。

 ただその後の安倍政権を見るとすべてが「追憶」だったかと言えば、そうではない。そこで、昨年11月の牧原出・佐藤信との共著『政権交代を超えて』(岩波書店)では、「追憶」の複層性を考察している。かつて安倍の祖父たる岸信介は、もう一度首相にカムバックできたならと次のような述懐を残している。(原彬久編『岸信介証言録』毎日新聞社、2003年)。

「私はいまでも思うんだが、戦後の日本では派閥間の抗争、党内の人間関係からいうて一度総理総裁になるとそれで一丁上がりということで、お次の番ということになるんです。本当は、総理をやってですよ、しばらく野に下って、今度は権力者としてではなく国民の側に立ってものを観察し、いろいろ思いを巡らしてこれを前の経験と結び合わせてもう一度総理をやった政治家は、前より大いに偉くなるんですよ。それを利用しないのは、国にとって非常に僕は非能率だと思うんだ」

「追憶」の政治を越えさせた絶妙のコンビ

 かくて首相のカバーストーリーを常に新しい人物で満たすことができなくなり、首相へのカムバックを「戦後憲法」下で初めて実現した人物こそが、他ならぬ岸の孫である安倍晋三であった。ここで岸は、前政権における"失敗"を含めた体験から、2度目の総理は、「追憶」に止まってはおられぬしヘタをやらぬことを示唆している。第1次安倍政権の最大の失敗は、イデオロギーを振り回す大政治と、補佐官を多用する小政治を、「お友達」ネットワークで乗り切ろうとしたが、結局官僚や政治行政のプロの知恵を利用する術を知らぬまま、これまで官邸や党の中に脈々と受け継がれてきた「暗黙知」を壊してしまったことにある。

 だから第2次安倍政権の命運は、かつて自分が壊した政治の「暗黙知」を再生できるかどうかにかかっていた。この点の安倍の反省はみごとである。第2次安倍政権はかなり早い段階で、古き良きネットワークを復活させ新しい人材とマッチングさせることによって、機動的かつ機能的な官邸を作り上げ、あらゆる権力の一元化に成功した。具体的に言えば、閣僚と同じく小泉政権以来4代の保守政権を支えた官僚を、官邸にカムバックさせ、「官高党低」と称される体制を築き上げた。それは「追憶」の人材を使いながら「追憶」の政治を越える可能性をもつことになる。

 これを実現したのは、誰あろう安倍総理と菅義偉官房長官の絶妙のコンビである。実は、安倍も菅も政治の履歴は浅く、細川政権以来の政治しか体験していない。安倍は93年、菅は96年の当選だから。したがって2人とも派閥の論理や旧来の党と官邸の文法をこれまたよくは知らぬ。すなわち派閥は名存実亡となり、派閥の長が総理総裁をめざして金と人事の支配を貫き、選挙のたびに派閥が盛衰をくり返す構造が事実上なくなった頃に、彼らは政治の現場を踏んだのだ。だから安倍と菅のコンビは、既成の政治にとらわれることなく、旧来の派閥を横断する形で多数派を形成し、選挙戦で勝利をおさめたのだ。

「御厨貴のウェブ論壇」のバックナンバー

  • 2014年4月22日

    反対者なき政治という安倍政権の不幸

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「反対者なき政治という安倍政権の不幸」の著者

御厨 貴

御厨 貴(みくりや・たかし)

東京大学名誉教授

1951年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学教授を経て現職。専門は政治史、オーラル・ヒストリー、公共政策、建築と政治。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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